本研究は日中の微弱な咬筋筋電図記録の障害となる,日常生活における表情筋の活動の影響を可及的に排除する記録法の確立を第一の目的とした。前年度に咬筋3箇所および側頭筋に筋電図電極を貼付し,表情筋の影響が少ない部位について検討し,咬筋中央部が最も望ましい貼付部位であることを明らかにした。 さらに,弱い荷重域における荷重と筋電図振幅との間に直線的な比例関係があることは明らかとなっていなかったため,その点についても検討を行ったところ,直線的な正の相関関係が認められた。 本年度は,前年度に確立された筋電図記録法を用いて,第二の目的であるインプラント治療による微弱な筋活動様相の変化について検討を行った。予備研究同様,咬筋筋電図記録は非常に小さなベースラインノイズで計測が出来ており,微弱な筋活動様相を識別できた。微弱な筋電図振幅を含む5Nの筋電図振幅を閾値とした場合に,インプラント治療前後での咬筋筋電図データを比較したところ,インプラント治療により日中のphasicな筋活動は有意に減少するという結果が得られた。一方,睡眠時ではインプラント治療前後で有意な筋活動の変化は認めなかった。また,従来の研究で設定されている20%MVCの筋電図振幅を閾値とした場合においても,インプラント治療により日中のphasicな筋活動は有意に減少するという結果が得られた。一方,睡眠時ではインプラント治療前後で有意な筋活動の変化は認めなかった。 本研究結果から,インプラント治療による咬合確保は日中の咬みしめ習癖の減少させる可能性が示唆される。
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