歯科領域では顎骨の骨量が不足し、対応に難渋することも稀ではない。骨増生術が必要とされる症例も臨床的には数多く存在し、骨補填材料の開発が望まれている。 本研究ではスタチン、炭酸アパタイトに着目して新規骨補填材料を開発することとした。 スタチンとは脂質異常症の治療薬として世界中で広く使用されている薬であり、骨中コレステロールを下げるだけでなく、骨新生に促進的な働きをすることが知られている。現在、世界的に広く使用されている骨補填材料は水酸アパタイト系の材料であるが、骨リモデリングサイクルに組み込まれることなく、生体内で長期に残存するという特徴がある。そこで、本研究では生体内と組成が近い炭酸アパタイトに着目し、スタチンと組み合わせることによってより効果的に骨増生ができるのではないかとの仮説を立て、検証することとした。平成26年度には炭酸アパタイトにスタチンを含有させる調製法を開発し、スタチンを変性させずに組み込むことができることを確認した。SEMにてその表面性状や内部構造の観察を行い、形状に変化を起こすことなくスタチンを均一に含有させることに成功した。平成27年度には実験動物にスタチンー炭酸アパタイト複合体を埋入し、生体内での反応を観察した。マイクロCT、組織学的観察により、炭酸アパタイトースタチン複合体が骨補填材料として有効であることが示唆された。
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