研究課題/領域番号 |
26861648
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
向坊 太郎 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (50635117)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ハイパーサーミア / TRPチャネル / Ex vivo顎下腺灌流 |
研究実績の概要 |
TRPチャネルは哺乳類においては29種類の遺伝子と,6つのサブファミリーにより構成されており,温度・浸透圧の刺激センサーとしての役割が考えられているが,その機能については不明な点も多い.現在までに唾液腺組織においてはTRPA,TRPV,TRPMチャネルの発現が確認されている.本研究では,既にチャネルの単独刺激による唾液分泌が確認されている,TRPV(TransientReceptorPotentialVaniloid)4チャネルに注目し,唾液腺に対する温熱刺激による催唾作用のメカニズムの解明を目指している.これまでの実験で,顎下腺を体外に摘出し灌流を行うEx vivo顎下腺灌流実験において,25℃から42℃までの環境温度下でTRPV4チャネルの特異的刺激薬とされるGSK101670AおよびRN-1747を灌流液中に添加して灌流を行ったところ,各温度での唾液分泌量の増加が認められた.しかし,灌流実験のみでは唾液分泌量のメカニズムの解明には不十分であるため,今後はTRPV4チャネルの刺激薬や阻害薬が細胞内[Ca2+]濃度の変化にどのような影響をもたらすかについて,カルシウムイメージング法を用いて検討する予定である.また,温度変化による唾液分泌の増加と唾液中のイオン組成との関連についても明らかにしたい.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TRPV4チャネルの唾液腺における生理作用はいまだ解明されていない点も多く,温度刺激のみならず,浸透圧刺激によるチャネルの活性化も指摘されている.細胞内[Ca2+]濃度の変化がチャネル自体の活性化によるものであるか,または浸透圧変化によるRVD(Regulatory volume decrease)による相対的な[Ca2+]濃度変化によるものなのかを明らかにする必要があると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
唾液分泌はムスカリン受容体へのアゴニストの結合をきっかけとして,細胞内[Ca2+]濃度の上昇,カルシウム依存性Cl-チャネル(TMEM16A)の活性化,Na+の腺腔内への排出を経て,水分子の移動が伴う複雑なメカニズムを持っている.温度変化はこれらのメカニズムの中の一部分に影響を与えるのか,全てのチャネルの駆動力を促進するのかは明らかになっていない.現在のところTRPV4 チャネルが温度上昇によって活性化され,結果として細胞内[Ca2+]濃度の上昇を招き,唾液分泌を促進するとの仮設のもと実験を行っている.今後は浸透圧変化による影響も考慮にいれつつ研究を進める予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に実施予定であったTRPV4siRNAを用いた阻害実験で当初の予定よりも手技的問題により実施が遅れ,その結果次年度に行うことになった.
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度においてSiRNAを用いた阻害実験を行う予定である.
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