研究課題
口腔乾燥症の治療法としてこれまで人工唾液や薬物療法などが用いられてきたが、超高齢社会のニーズより治療効果が高くより副作用の少ない治療法の開発が求められている。そこで申請者は唾液腺に対して皮膚外から局所的温熱刺激を与えるハイパーサーミアに着目し、その臨床応用について検討してきた。これまでの研究により、唾液腺自体への直接的な温熱刺激が唾液分泌量の上昇をもたらすこと、さらに唾液腺細胞内のカルシウム濃度が温度上昇に伴い上昇し、その結果唾液分泌量が上昇することが明らかになっていた。本研究ではカルシウム上昇に関与する複数のメカニズムのうち、温度感受性の原因となるものを特定して口腔乾燥症に対する新たな治療戦略を確立することを目的とした。細胞内カルシウム濃度上昇は副交感神経刺激後の最初のシグナルとなり唾液分泌が開始される。細胞内カルシウムの上昇は細胞内の小胞体に貯蔵されたカルシウムの放出と、続いて起きる小胞体内のカルシウムの枯渇をシグナルとした細胞外からのカルシウムの流入の2つの経路が確認されている。当初本研究では細胞外カルシウム流入経路のひとつと考えられるTPRチャネルに着目していたが、カルシウムイメージング法とタプシガーギンを使用したex vivoマウス顎下腺潅流実験から、細胞外カルシウム流入の関与が否定された。一方で細胞外カルシウムを除去した状況下でムスカリン刺激を行い、小胞体からのカルシウム放出とそれに伴う唾液分泌量に温度感受性があるかを検討したところ、37℃は25℃よりもわずかにカルシウム濃度と分泌量の増加を認めたが、有意差は認めなかった。結果として温度上昇に伴う唾液分泌量増加の原因を特定するには至らなかったが、今後、小胞体からのカルシウム放出に関わるメカニズムについてより詳細に検討する余地があると考えられる。
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Effects of Beverage Ingredients on Salivary Fluid Secretion with an ex Vivo Submandibular Gland Perfusion System: Tannic Acid as a Key Component for the Inhibition of Saliva Secretion.
巻: 5 ページ: 12-18
10.4236/ojst.2015.51003