本年度は、PEG造設により非経口摂食となった脳梗塞後のラットに対し、口腔リハビリテーションによる効果の有無について以下の測定を行った。 顎口腔運動群(脳梗塞+PEG造設+液体飼育飼料の経口摂食)と、非刺激群(脳梗塞+PEG造設+液体飼育飼料の経管栄養摂取)の2群を設定した。液体飼料飼育2週が経過した時点で、Y-maze試験を行い、脳内抗酸化物質(アスコルビン酸と尿酸)についてはマイクロダイアリシスを用いてin vivoにより測定した。 Y-maze試験の結果では、交替行動率は顎口腔運動群が非刺激群と比較して高くなる傾向を示したが、有意な差は認めなかった。また、総侵入アーム数では両群間に有意な差は認めなかった。 脳内抗酸化能の結果では、顎口腔運動群に対して、液体飼育飼料摂取行為による自発的な舌運動刺激を行わせたところ、運動開始時に即時反応し、尿酸値が上昇する傾向が認められた。また、間隔を空けて再度同様の刺激を行った際にも、同様の上昇反応を認めた。一方、非刺激群において液体飼育飼料による人工的な経管栄養摂取を行ったところ、刺激直後の反応は不鮮明であったものの、緩やかに上昇する傾向を認めた。なお、アスコルビン酸に関しては、分析値が測定限界値を超えおり、正確な比較を行うことができなかった。 舌運動による顎口腔機能を介した刺激は、海馬での脳内抗酸化能に直接的な影響を与えており、脳梗塞後の口腔リハビリテ―ションの有用性を示唆する有用な結果が得られた。
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