睡眠時ブラキシズム(SB)は睡眠中に行われるグラインディングやクレンチングの総称であり,顎関節症や口腔顔面痛,咀嚼筋痛などの重要なリスクファクターである.SBの発現機序に関して,神経生理学的な中枢性の要因が大きく関与していると言われているものの,睡眠中という無意識下でこのようなパラファンクションが生じる詳細なメカニズムは明らかではない.本研究は,日常的に睡眠時ブラキシズム(SB)を行なっていることが脳機能へ影響があるのか否かを検証することを目的として行なった. まず,臨床診断を行って被験者を選択したのち,睡眠検査室において,オーディオビデオモニタリングを含む睡眠ポリグラフ(PSG)検査を行い,負荷的に簡易型PSG検査装置を併用して計測した.この検査は7.5時間の記録を行い,咬筋筋電図,脳波,脈拍数,頭位,頭の動きを記録した,睡眠に関するパラメーターについてはPSG記録をもとにAmerican Academy of Sleep Medicineのガイドラインに従って睡眠検査技師がスコアリングを行った.咬筋EMG記録を元にしたSB episodesの判定については,SBのスコアリングに習熟した1名の歯科医師が行った.SB群とコントロール群を比較した結果,総睡眠時間や睡眠効率,睡眠潜時はほぼ同等であった.さらに,睡眠ステージの割合については,SB郡の方がStage N1とStage REMの割合がやや大きく,Stage N2およびN3の割合が小さい傾向が認められたが,有意差は認められなかった.これらより,SB患者の睡眠中の脳活動については健康成人と比較してほぼ同等であることが示唆された.
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