研究実績の概要 |
近年,インプラント治療は補綴治療において欠かせない選択肢の一つとなり,全身疾患を持つ患者にインプラント治療を施す機会は増加している.その中でも,糖尿病患者に対するインプラント治療の機会は増えているものの確たるエビデンスはなく,オッセオインテグレーションの早期獲得が非常に重要であるとの報告がなされている.共同研究者は,純チタン表面に濃アルカリ修飾を行うことで,チタン金属表面上にナノレベルの構造を析出し,その構造がラットの骨髄細胞の硬組織への分化誘導能を向上させインプラントとして臨床応用するための可能性の一端を示した.そこで,本研究では濃アルカリ修飾によりチタン表面に析出されたナノ構造を糖尿病ラットに応用し,早期のオッセオインテグレーションを獲得できる新規インプラント材料の創製を目指す. 市販の純2級チタン金属板を10M水酸化ナトリウム水溶液に浸漬し、室温大気圧条件下で24時間撹拌させて反応を進行させた後、イオン交換水で導電率が5 μS以下になるまで洗浄し,自然乾燥させ,ナノ構造を析出させた。生後7週齢のGKラットの両側大腿骨から骨髄間葉細胞を採取後,3代目を実験に供した.培養7,14日後のALP活性および21,28日後のオステオカルシンの産生量およびカルシウムの析出量を測定した. ALP活性,オステオカルシン量およびCa量は全ての計測時間において,実験群で対照群と比較して有意差が認められた.以上より,糖尿病状態下においてもTNS構造が高い硬組織分化誘導を向上させるという結果が明らかとなった.
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