研究実績の概要 |
生活習慣病である糖尿病罹患患者では創傷治癒期間の長期化によりインプラント周囲炎の罹患リスクが高くなるため、早期のオッセオインテグレーション獲得が期待される.そこで、本研究ではこれまで早期の骨形成を誘導すると報告してきた加熱処理を加えたナノシート構造(TNS)析出純チタンが糖尿病環境下においてラットの硬組織分化誘導能に与える影響について検討した. 実験材料として市販のJIS2級純チタンを使用し,表面にTNSを析出させたものを実験群,#2000まで研磨したものを対照群として使用した.その後,各種試料を 600℃にて加熱処理を行った.試料表面観察はSEM, SPM, 元素解析はXPSで行い、接触角も測定した.また、生後8週齢のGK雄性ラットの両側大腿骨から骨髄間葉細胞を単離し、継代培養し.3代目を各種試料上に播種し、通常グルコース群(5.5mM)と高グルコース群(24mM)の2群で培養し、ALP活性、OCN産生量、Ca析出量について測定した.また、培養3,4週後の各種試料表面をアリザリンレッドにて染色し観察した. 実験群の材料表面は厚い酸化膜の上にナノメートルレベルのシート構造が観察され、これは13nmのノジュール構造であり親水性を持つことが明らかとなった.また、各種分化マーカーの評価を行ったところ各グルコース群で実験群において対照群と比較して高い値を示した.以上の結果により、グルコース濃度の変化に関わらずTNSが確実な初期固定を得られる可能性の一端を示唆した.
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