本研究の目的は、多層性ナノハイドロキシアパタイト-コラーゲンに遺伝子をコードしたナノリン酸カルシウム顆粒ベクターを付与させることで、遺伝子や細胞賦活因子の徐放制御機構を具備したscaffoldを開発することである。生体材料上での遺伝子導入では、ベクターの生体親和性が特に重要となる。 【実験1】ヒト骨髄系未分化間葉細胞を用いて、ポリエチレンイミン、硫酸プロタミン、オクタアルギニンをそれぞれ単独または複合して付与したリン酸カルシウムナノベクター(以下CaPナノベクター)を精製し、遺伝子導入効率や細胞毒性を検討した。その結果、DNAとプロタミンの複合体にオクタアルギニンもしくはプロタミンを付与したCaPナノベクターが最適であることが明らかとなった。 【実験2】次いで、ナノハイドロキシアパタイトーコラーゲン複合体(以下nHAC scaffold)に、実験1で精製したCaPナノベクターを組み合わせ、nHAC/CaP scaffoldを作製した。ヒト骨髄系未分化間葉細胞を用いて、同scaffold上での遺伝子導入効率を測定したところ、nHAC/CaP上での遺伝子導入効率は、CaPの遺伝子導入効率に強く依存することが明らかとなった。 【実験3】これまでの結果を元にBMP-2タンパク発現plasmidをコードしたCaPナノベクターを配合したnHAC、および従来の手法であるBMP-2溶液を含浸させたnHACを作製し、ラット背部皮下に移植し、生体内でのBMP-2徐放量を測定比較した。その結果、CaPナノベクターを配合したscaffold群はBMP-2溶液を含浸させたnHACよりも長期にわたりBMP-2を徐放させること、scaffoldの種類により徐放期間が異なることが明らかとなった。
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