研究課題
間葉系幹細胞(MSC)は組織再生療法の源として注目を集めている 。近年、MSC細胞治療製剤は臨床試験が進行中であり、移植片対宿主病(GVHD)に対する治療法として効果をあげている。ここで用いられるMSCは自己のものではないため、同種移植となる。同種の細胞を移植した際には同種免疫応答、すなわち拒絶反応が生じると考えられる。しかしながら一方で、MSC には免疫調節作用があることが知られている。申請者はこれまでに間葉系幹細胞(MSC)の特徴をもつ歯根膜由来組織幹細胞の同種移植が歯周組織再生を顕著に促すことを見いだした。その際、拒絶反応や免疫に関するサイトカインの上昇が認められなかかったため、免疫調節機構が関与していると考えられる。本年度はそれれらの成果の論文発表を行った(Bioreserach Open Access. 5.22-36)。しかしながら、その詳細な免疫応答メカニズムについては不明な点も多いのが現状である。そこで、さらに同種のMSC 移植による免疫応答メカニズムに着目し、歯根膜由来組織幹細胞と免疫応答細胞の相互作用を明らかにすることとした。ヒト歯根膜由来幹細胞と同種のヒト血球系由来T細胞の共培養系で実験を行った。本研究では全血からの分離によりCD4 陽性、CD8陽性、CD3陽性T細胞を回収し、それぞれ用いることとした。 その結果、共培養によりこれらの細胞の増殖が見られなかったことから、ヒト歯根膜由来幹細胞は免疫応答を惹起しないことが明らかとなった。さらにヒト樹状細胞により免疫を惹起させたT細胞をヒト歯根膜由来幹細胞と共培養することで、各T細胞数を減少させる傾向が見られた。ヒト歯根膜細胞に免疫を調節する可能性があるといえる。今後さらに詳細なメカニズムについて検討予定である。
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BioResearch Open Access
巻: 5 ページ: 22-36
10.1089/biores.2015.0043