研究課題/領域番号 |
26861671
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
大山 厳雄 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (30451975)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 骨造成 / 細胞外タンパク質 / システインリッチドメイン |
研究実績の概要 |
顎口腔領域の顎骨疾患に対し、骨造成は患者のQOL向上のために非常に重要であり、現在患者自身の侵襲を伴う自家骨移植の他に有効な方法は確立していない。また近年、骨形成促進タンパク質であるBMPの臨床応用の報告は散見されるが、その使用の有益性は確証されていない。前回、我々は骨形成タンパク質であるBMPに関連した、骨形成促進因子(Vwc2、Vwc2-like)を発見したため、今研究ではそのメカニズムを解明し、少しでも早い臨床応用を目的とする。 1.Vwc2の骨芽細胞分化促進に対するの作用の解析:細胞外タンパク質であるVwc2を培地内に様々な濃度で混入し、マウス頭蓋骨骨芽細胞前駆細胞の細胞株であるMC3T3-E1細胞またはマウス頭蓋骨から得たPrimary osteoblastを培養。骨の石灰化に深く関与する酵素であるALP活性解析、real-time PCRにて骨芽細胞分化に関与する遺伝子の発現、Alizarin Red Sによる石灰質の染色により石灰化の程度を解析する。以上により単に骨芽細胞に分化誘導をかけた群と比較して、Vwc2群がより骨芽細胞分化を促進することを確認する。 2.Vwc2-likeの骨芽細胞分化促進に対するの作用の解析:Vwc2-likeの発現遺伝子を導入したプラスミドベクターを大腸菌に導入し、タンパク質としてのVwc2-likeを抽出、精製する。その後、Vwc2-likeを様々な濃度で培地内に混入し、上記Vwc2と同様の実験を行い、骨芽細胞分化促進に対するの作用を解析する。 3.in vivoにおけるVwc2、Vwc2-likeの骨形成能の解析:5週齢のマウスの頭部に切開を加え、頭蓋骨にトレフィンパンチで骨欠損モデルをつくり、そこにコラーゲンスポンジにBMP-2、Vwc2、Vwc2-likeを種々の濃度で含ませたものを載せ、縫合する。μCTにて欠損部の経時的な骨形成の経時的変化を観察し、切片を作成し各種染色を行うことによって組織学的、免疫組織学的な検討を行い、Vwc2、Vwc2-likeの骨形成制御がどの程度行われているか確認する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.Vwc2の骨芽細胞分化促進に対するの作用の解析:Vwc2を種々の濃度で培地中に添加し、Primary osteoblast、MC3T3-E1 cellでALP活性、石灰化物染色を行った。いずれもネガコン、ポジコンと比較して、石灰化の促進に働くことが示唆された。遺伝子の発現はreal-time PCRで解析を行い、ある骨分化マーカーの有意な発現上昇を認めた。 Vwc2タンパク質上に存在するRGD配列による細胞接着による骨形成促進を疑ってRGD関連ペプチドを添加の上、石灰化試験を行ったが、コントロールと比較して有意な差は得られなかった。 2.Vwc2の骨芽細胞分化促進に対するの作用の解析:大腸菌にVwc2-like遺伝子プラスミドを導入し、タンパク質抽出、精製を行った。精製したタンパク質についたタグに対する抗体でウエスタンブロットを行い、目的タンパク質の抽出を確認した。Vwc2同様にMC3T3-E1細胞に作用させALPの活性を解析したが、コントロールと比較して有意な差が得られていないため、こちらも条件・方法の再検討が必要である。 3.in vivoにおけるVwc2、Vwc2-likeの骨形成能の解析:実際にマウス頭蓋骨骨欠損モデルを作成し、ネガコンと比較してVwc2単剤での有意な骨形成促進を認めた。また、実際にパラフィン包埋切片を作成し、組織学的に正常な骨形成を確認した。Vwc2-likeはin vivoにおいて単剤での骨形成能を確認できておらず、条件の再検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
1.Vwc2の骨芽細胞分化促進に対するの作用の解析:骨芽細胞分化培地の組成や、ALP活性試験でのタンパク質採取日等をさらに検討し、より良いデータを得られるようにする。 2.Vwc2-likeの骨芽細胞分化促進に対する作用の解析:抽出したVwc2-likeタンパク質に活性があるのか、以前の研究で発表したreal-time PCRでのOsterix発現の上昇やAlizarin Red S染色での石灰化の亢進を確認し、Vwc2と同様のALP活性や他の骨芽細胞分化遺伝子の発現の解析を行う。幸い、実験で繰り返し使用するのに十分な量の遺伝子導入大腸菌や精製タンパク質のストックがあるのでスムーズに実験が行われると考える。活性がないと判断された場合は、市販のVwc2-likeタンパク質を使用して実験を遂行する。 3.in vivoにおけるVwc2、Vwc2-likeの骨形成能の解析:上記と同様に、マウス頭蓋骨欠損モデルを作成し、Vwc2を各種濃度で填入したマウスに、1週間ごとに骨沈着蛍光物質を注射して、検体を得た。これらで非脱灰凍結切片を作成、蛍光顕微鏡で観察し、骨形態計測を行う予定である。 4.論文の作成 すでに得られたデータおよび、上記のデータを総合して検討し、論文を作成、英字雑誌へ投稿を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
予測よりスムースに結果が出て、少ない経費で実験が行えたため。また、次年度論文投稿、学会発表等で費用が嵩むと考えられたため。
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次年度使用額の使用計画 |
英字雑誌への論文投稿料、追加実験費用、学会発表時の費用に充てる。
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