研究実績の概要 |
本研究は,いまだ全貌が明らかとなっていない歯の発生メカニズムを,Hox遺伝子に着目し,本遺伝子群の歯胚発生への関わりを組織学的,細胞生物学的ならびに形態学的に解明することを目的としている. 胎生13,14,18日齢のマウス下顎第一臼歯歯胚において,13のHox遺伝子が発現しており,その中でも,歯の発生のキーレギュレーターであるShhとの関連が疑われるHoxd12に注目し実験を行った.Hoxd12は肢芽由来細胞においてShhの発現を誘導することが報告されており,Shhはそのプロモーター領域にHoxd12結合配列を有しているため,実際にHoxd12が結合することが知られている. そこで,ラット歯原性上皮細胞を用い,Shhおよびエナメル芽細胞分化マーカーのひとつであるAmbnとの関係を検討するため,始めにHoxd12遺伝子のsiRNAをエレクトロポレーション法を用いて導入した.導入効率の評価には蛍光ラベルされたコントロールsiRNAを用いた.次にHoxd12遺伝子の発現ベクターを作製し,同様にエレクトロポレーション法を用いてラット歯原性上皮細胞に遺伝子導入を行った.コントロール群には,GFP発現ベクターを用いた. その後,その遺伝子のノックダウンおよび強制発現による影響を,関連遺伝子の発現により評価,解析を行った. Hoxd12遺伝子の遺伝子抑制モデルおよび強制発現モデルにおいて,Hoxd12遺伝子の発現を抑制すると,AmbnおよびShhの発現が低下し,Hoxd12遺伝子の発現を促進すると両遺伝子の発現は上昇した. 以上のことから歯原性上皮細胞におけるHoxd12 の発現がShh, Ambn の発現に関連する可能性が示唆された.
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