研究実績の概要 |
組織再生医工学においては、再生すべき組織に適した細胞、細胞の足場材料、そして増殖因子の3要素に適切な環境と時間が必要であることが知られている。その中でも歯周組織や骨組織の再生には、細胞として間葉系幹細胞や歯周組織構成細胞、足場材料としてHAやβ-TCP、増殖因子としてbFGF、BMP、PRP、エナメルマトリックスタンパク質等が検討され、一部で臨床応用されている。特に間葉系幹細胞を用いた再生療法は様々な分野で検討されているが、骨髄液採取に伴うドナーへの侵襲、細胞培養施設の設置や移植に伴うコストなど、一般臨床の現場ではその実施が難しく、改善の余地があるのが現状である。 移植材料は、生体親和性や組織置換性、組織誘導能を有するのみならず、歯科医療の臨床の現場で実行可能等の条件を満たさなければならず、これらの条件をすべて満たす材料は現在も研究途上である。 間葉系幹細胞は骨髄中に多く存在するが、末梢血においても一部存在することが示されている。さらに、末梢血から目的とする細胞を採取するために、細胞分離用不織布フィルターを用いた細胞分離法が開発されている。また足場材料の候補として、生体内での吸収、置換が起きやすいβ-TCPは足場材料として有用な材料である。 そこで本研究は、組織再生医工学の細胞として、より簡便で生体に対し侵襲が少なく採取可能な末梢血由来単核球 (peripheral blood mononuclear cells, PBMCs) を、足場材料としてはβ-TCP顆粒を用い、新たな骨移植材料の開発を行うこととした。 平成28年度は、以前行った細胞分離用不織布フィルター、β-TCP、PBMCsを用い、イヌ末梢血および実験的骨欠損にて行った実験結果から、フィルター分離前後の血球比率を比較した。また作製した組織切片から、骨再生の状態を組織形態学的に評価し、各実験群間の比較を行った。
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