研究課題/領域番号 |
26861687
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
鷲尾 薫 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (50514486)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 歯根膜 / 細胞シート / 歯科インプラント / チタン |
研究実績の概要 |
歯科インプラントは審美的にも機能的にも優れており、近年広く行われている。一方で治療後の細菌感染などが原因で、炎症が顎骨まで蔓延した状態となるインプラント周囲炎が引き起こされることも報告されており、その適切な治療法を見いだせておらず問題となっている。 そこで歯根膜組織の持つ抗炎症作用に着目し、チタン周囲に歯根膜様組織を含む歯周組織を構築可能であるかどうかについて検討を行った。平成26 年度に行った小動物を用いた移植実験により表面処理をしたチタンに歯根膜細胞シートを付着させることで生体に類似した歯周組織が構築されたことを受け、平成27年度は大動物を用いて移植実験を行い、組織学的検討を行った。 具体的にはイヌ抜去歯周囲から歯根膜を採取し、歯根膜細胞シートを作製した。抜歯窩が閉鎖したのち、インプラントを植立させるための欠損を作製、ヒトへも応用できるサイズのチタン周囲に歯根膜細胞シートを貼付したものを欠損部へ移植した。組織学的評価の結果、8~11週間移植したところ、表面処理を行ったチタンの一部に歯根膜様線維性組織が構築されているのが観察された。長期間移植したほうがより硬組織再生が見られた。しかしラットで見られたようなセメント質様硬組織層は歯根膜層とチタンの間に認められず、よりセメント質様構造が構築されやすい細胞シートの作製方法の検討を開始した。 以上の結果について国内学会発表(口演)、国外学会発表(ポスター)を行い、昨年度出願した特許(国内)についてはPCT出願を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イヌ3頭を用いて大動物顎骨へチタンー歯根膜細胞シートを移植する手法を確立することができた。組織学的解析の結果、イヌモデルにおいても歯根膜様組織の再生がチタン上に一部認められ、ほぼ予測通りの結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
イヌ顎骨移植の結果、細胞シート移植により歯根膜様組織が誘導されたが、セメント質様組織については不明瞭であった。セメント質は歯根膜組織との結合に重要な組織であるため、本組織再生を促すような更なる検討が必要と判断した。 よって次年度はセメント質様組織構築可能な細胞シートの培養方法の検討をin vitroにて行い、小動物での硬組織再生を確認した後、再度イヌモデルへ移植して歯周組織再生の確認を行うこととした。同時に実用化に向け本研究を進展させるべく提携企業の模索を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
イヌの購入を別予算で行い、余剰分を組織標本作製に充当し差額が出たため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
引き続き動物実験を行う計画であるため、その費用の一部に充当する予定である。
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