歯科インプラントのプラットホーム部分をくびれさせることをプラットホームスイッチングといい、インプラント周囲の経年的な歯槽骨吸収を防ぐ方法として知られているが、生物学的メカニズムはほとんど解っていない。本研究の目的は、歯科インプラントにおけるプラットホームスイッチングの分子生物学的メカニズムを解明することである。 我々は直径1mm、長さ4.7mmのプラットホームスイッチングインプラント(PSi)を製作し、ラットの口蓋に埋入して周囲組織を採取した。ノーマルプラットホームインプラント(NPi)において、骨縁に近い部分にインプラントを囲むように横走するコラーゲン線維が観察された。(Psi)においても、この輪走線維はくびれ部分に観察された。これはXavier らの報告した輪走線維に相当するものと思われた。この輪走線維に存在する線維芽細胞周囲にtype XII collagenの強いシグナルが観察された。また、sham群に比べてPSi群でtype XII collagen 、TGF-b1、Integrin mRNAの有意な発現上昇が認められた。一方で、骨芽細胞の分化マーカーmRNAに変化は見られなかった。 type XII collagenは線維結合型コラーゲンに分類される細胞外基質タンパクで、生体内では腱や靭帯、角膜、歯根膜など、機械的刺激を受容する部位に局在が認められ、コラーゲンネットワークの組織安定性の役割を持つことが示唆されている。PSインプラント周囲において、輪走線維を保持、安定化させるシステムが存在する可能性が示唆された。
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