口腔癌頸部リンパ節転移巣における被膜外浸潤は、術後治療立案のための世界標準マーカーである。この病態は複数あると推察されているものの、詳細は明らかではなく、被膜外浸潤は1つの因子として、一括りに捉えられているのが現状である。申請者は、術前治療を伴わない63症例、229個の転移リンパ節のうち149個の被膜外浸潤陽性リンパ節を対象として、被膜外浸潤がどのようなリンパ節にどのように生じるのか、病理組織学的・形態学的な詳細検索を行い、リンパ節の短径に着目、短径が小さいにも関わらず被膜外浸潤を生じている症例は、リンパ節の短径が大きくて被膜外浸潤を生じている症例に比べて有意に経過不良を呈することを確認、論文にまとめた。 一方、口腔癌頸部リンパ節転移巣における被膜外浸潤と関連する遺伝子変異を同定する目的に、被膜外浸潤を生じた口腔舌扁平上皮癌3症例の原発巣、すべてのリンパ節転移巣、正常リンパ節(コントロール)に対し、ゲノムDNAを抽出し、50種類の遺伝子を対象とした既成パネルを用いて、ディープシーケンス解析を実施した。原発巣は、腫瘍内不均一性の検索のため、複数ヶ所からのDNA抽出を試みたが、パラフィン包埋サンプルからは高品質なDNAが得られず、新鮮凍結検体を用いたため、1ヶ所のみのデータとなった。リンパ節に関しては、新鮮凍結検体採取は困難であったため、パラフィン包埋サンプルを使用した。加えて別の口腔扁平上皮癌20症例における原発巣新鮮凍結検体、リンパ節転移巣、血液(コントロール)からのゲノムDNAに対しては、癌ゲノム・アトラス(The Cancer Genome Atlas:TCGA)をはじめとする癌の分子的機序の解明を目指す包括的プロジェクトにより、頭頸部癌において高頻度で変異が報告されているTP53を含む18遺伝子を対象にしたディープシーケンス解析を実施した。現在、結果を確認し、TCGAデータとの整合性を検索している最中である。
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