研究課題
本研究の主たる目的は難治性骨系統疾患の一つであるFGFR3軟骨形成不全症(タナトフォリック骨異形成症および軟骨無形成症)の病態解明とその治療法の探索である。FGFR3は軟骨の形成において重要な役割を果たしており、その変異は軟骨の形成異常を引き起こす。その結果、FGFR3軟骨形成不全症の患者は四肢の短縮や頭蓋骨の変形などの症状を呈する。現在、様々な治療薬の探索が行われている。本研究では患者由来のiPS細胞を用いた疾患iPS細胞モデル研究を行うことにより、病態の解明と薬剤の探索を行う。さらに疾患モデルマウスを用い、その薬剤の効果を確認する研究である。その結果として、スタチンが治療薬の候補になる可能性を示し報告した(Yamashita et al. Nature 2014)。FGFR3軟骨形成不全症の改善に効果が認められたスタチンはコレステロール値を下げる作用がある。コレステロールは小児の発育において非常に重要である。平成27年度中は、FGFR3軟骨形成不全症に対するスタチンの作用機序の解明に尽力し、患者に届ける上でその安全性の情報を得ることに注力した。
1: 当初の計画以上に進展している
本研究の主たる患者由来のiPS細胞を用い、疾患iPS細胞モデル研究を行うことにより病態の解明と薬剤の探索を行うことである。これまでスタチンがFGFR3軟骨形成不全症の症状改善に効果があることを報告した。そのため本研究課題の主たる目的は達成したと考えられる。さらにスタチンのFGFR3軟骨形成不全症に対する作用機序を解明することにより、患者に届ける上での安全性の情報を得ることに注力することができたため、当初の計画以上に進んでいると考えられる。
本研究において、スタチンがFGFR3軟骨形成不全症を改善することを明らかにした。実際の臨床においてスタチンの主たる作用はコレステロール値を下げることである。しかし、コレステロールは小児の発育において非常に重要である。もしスタチンの効果がコレステロールを介さない場合、より安全な創薬につながると考えられる。今後はスタチンのFGFR3軟骨形成不全症に対する作用機序を解明することにより、安全な創薬を目指す。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件、 招待講演 7件)
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