骨粗鬆症治療薬としてビスフォスフォネート製剤や抗 RANKL抗体などの骨吸収抑制薬の投与が広く行われている。これらは非常に大きなメリットをもたらすが、顎骨壊死などの特有な副作用があり歯科領域での関心も高い。本研究は、骨吸収抑制薬であるゾレドロン酸(ZOL)と抗 RANKL 抗体の影響について、閉経後骨粗鬆症モデルマウスを用い、骨細胞・骨芽細胞に着目して検討した。 9 週齢マウスに卵巣摘出術(OVX) を施行し、術後 2 週目からZOL 200 μg / kg を週 2 回、1 ヶ月間腹腔内投与した(OVX-Z)。なお、非OVXマウスにZOLを投与したものを Z とした。抗 RANKL抗体投与モデルは、 9 週齢マウスを OVXし、術後2週目に抗 RANKL 抗体を 5 mg / kg 1 回、皮下注射し、1ヶ月間飼育した(OVX-D)。薬剤非投与マウスを対照とした(C 、OVX-C)。長管骨におけるマイクロCT解析では、OVX-Z、OVX-D は OVX-C と比較して有意な骨量増加を認めた。しかし、OVX-ZとZとの骨量差がCとZとの差より大きく、OVX 状態でZOLが骨形成を抑制している可能性が考えられた。そこで、骨細胞特異的な骨量調節因子Sclerostinの発現を検討した。Sost遺伝子発現はOVX-C と比較してOVX-Z で変化がなく、OVX-D で有意に上昇した。皮質骨中のSclerostin発現を免疫染色にて検討したところ、OVX-ZではOVX-Cと比較して減弱し、OVX-D では OVX-C と比較して骨小腔、細胞質、骨細管、骨基質での染色性が強くなった。また、Col1aとDmp1の遺伝子発現はOVX-DのみOVX-Cと比べて有意に増加した。したがって、2つの骨吸収抑制薬はいずれも骨量増加作用を示す一方、骨細胞・骨芽細胞への影響は異なる可能性が示唆された。
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