研究課題/領域番号 |
26861718
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
原田 丈司 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 招聘教員 (00403030)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 嚥下運動 / 嚥下中枢 / サブスタンスP / セロトニン / ドーパミン |
研究実績の概要 |
本研究は、嚥下運動の神経・筋機構を検証し、ドーパミン、セロトニンならびにサブスタンスPの関与をWorking heart brain stem preparation(WHBP)標本を用いて検討することで、嚥下運動の制御機構を明らかとすることを目的としている。このWHBP標本は、全身麻酔薬が影響しないin vivoに近い状態の標本に対して、in vitroの研究手法を用いることができる有用な実験標本である。26年度は、ラットにおいてWHBP標本を用いた嚥下運動モデルを作成し、上喉頭神経に対する電気刺激を行い、咬筋、顎舌骨筋、中咽頭収縮筋、上部食道筋への連続した筋活動を記録してきた。また、この一連の筋活動が出現している間は呼吸活動が抑制され、さらに口腔から食道へと食物を輸送する嚥下活動であることを、染色液を用いて確認し、安定した嚥下活動を発現する実験条件を確立した。予備実験で確認していたサブスタンスPのWHBP全標本投与における10回嚥下活動時間(嚥下活動潜時)の短縮は、異なる濃度のサブスタンスPを投与しても濃度依存的ではないが、有意な短縮が認められた。しかしながら、サブスタンスP拮抗薬のWHBP全標本投与では、嚥下活動潜時の短縮は認められなかった。また、サブスタンスPをWHBP全標本投与することで、嚥下回数は濃度依存的に、有意に増加することが確認された。一方、サブスタンスP拮抗薬のWHBP全標本投与では、嚥下回数は増加しなかった。これらの結果より、WHBP標本において誘発された嚥下活動に対して、サブスタンスPがその発現を促進的に制御することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
26年度は、WHBP標本を用いた嚥下運動モデルの作成を繰り返し行った。そして、咬筋、顎舌骨筋、中咽頭収縮筋、上部食道筋の複数の筋活動を記録し、安定した嚥下運動を誘発させることができた。また、嚥下運動に対するサブスタンスPの関与を検証するためにWHBP全標本投与を行い、嚥下回数や嚥下活動潜時の変化まで測定できたため、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
26年度は、嚥下運動に対するサブスタンスPの関与を検証するためにWHBP全標本投与を行い、嚥下回数や嚥下活動潜時の変化まで測定できたが、27年度は、検証する濃度やサンプル数を増やすことを考えている。さらに、サブスタンスPを延髄内にマイクロインジェクションして嚥下運動の変化を測定することで、延髄内におけるサブスタンスPの調節機構を検証する。 そして、WHBP標本を用いて誘発された嚥下運動を理解した上で、脳マイクロダイアリシス法を応用する。誘発された正常な嚥下運動時での黒質線条体におけるドーパミンならびにセロトニン濃度を測定する。安定したモニタリングが可能となった段階で、潅流液中にサブスタンスPを投与した時の嚥下運動における、黒質線条体のドーパミンならびにセロトニン濃度をモニタリングして、サブスタンスP、ドーパミン、セロトニンの嚥下運動への関与を検証する予定。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度の研究を誠実に遂行し、概ね順調に進展しておりますが、研究費の中で54,845円の未使用額が生じました。セロトニン作動薬等の試薬の種類の変更や、英語論文発表が遅れており、校正等に伴う謝金が未使用となったため、当該未使用額が生じました。平成27年度に使用することによって、より研究が進展することが見込まれます。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度までの達成度は、概ね順調に進展しており、当初の計画に沿って遂行することで、平成27年度には、研究結果に対する英語論文発表が可能と考えている。その時に当該未使用額を使用する予定です。
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