研究課題/領域番号 |
26861723
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
山崎 佐知子 広島大学, 大学病院, 病院助教 (00632001)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 細胞培養 / 歯髄細胞 / 分化誘導 / 遺伝性疾患 / 人工多能性幹細胞 |
研究実績の概要 |
本研究では、遺伝性疾患患者由来細胞から無血清培地を用いてフィーダー細胞を使用せずiPS細胞を樹立・維持し、詳細な発症メカニズムの解明および診断・治療法の開発を行うことを目的としており、以下のとおり実施した。 ヒトiPS細胞の未分化性および多分化能を維持可能な無血清培養法の改良およびヒトiPS細胞誘導法の改善のため、センダイウイルスベクターを使用しゲノムDNAへの挿入のない安全性の高いiPS細胞の作製、ならびに動物由来成分を含まない全組成が明らかな無血清培地を用いたiPS細胞作製法について検討を行い、その方法を確立した。さらに、樹立した鎖骨頭蓋異形成症(CCD)患者由来疾患特異的iPS細胞を用い、骨・軟骨細胞系列へ分化誘導を行い、健常人由来iPS細胞と比較検討を行った。CCDの原因遺伝子Runx2は軟骨細胞分化、破骨細胞分化、歯の発生に重要な因子であり、CCD患者由来細胞では分化誘導時にRunx2やColl10A1遺伝子発現の有意な発現低下を認めるとともに、骨・軟骨分化誘導時に形成不全を認めた(論文投稿中)。また、試料提供を受けたCCD患者はRunx2 Exson3のミスセンス変異を認めるため、変異部位を正常化する人工ヌクレアーゼ(TALEN)の構築を行い、TALENを用いてCCD-iPS細胞のゲノム編集行い、変異遺伝子配列を正常化した細胞の取得を目指している。また、その他にも顎顔面領域に異常をきたす各種遺伝性疾患患者由来歯髄細胞からiPS細胞を作製し、細胞バンク化するとともに、各疾患における病態解明について検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在センダイウイルスを用いた無血清培養法を確立し、血液細胞ならびに歯髄細胞からの人工多能性幹細胞の樹立が可能となった。また、同培養方法を用いて、鎖骨頭蓋異形成症(CCD)やその他顎顔面領域に異常をきたす遺伝性疾患についても疾患特異的iPS細胞を樹立し、GMP準拠施設内でのiPS細胞誘導および幹細胞バンク化をすすめている。また、CCD-iPS細胞の病態発症メカニズムの解析を行うため、分化誘導を行い、比較検討することで健常人と比較し優位な差を認めた。さらに、人工ヌクレアーゼを用いて疾患特異的iPS細胞のミスセンス変異部位の配列遺伝子改変を検討しているが、改変iPS株の作製に苦渋しており、人工ヌクレアーゼの再作製を実施する必要が生じたため、現在再構築中である。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、センダイウイルスを用いた無血清培養法を用いてiPS細胞の樹立を行うともに、歯髄細胞のみならず採取が容易な血液細胞を用いたiPS細胞の誘導法についてより簡便な誘導方法を確立する。 また、樹立した各種疾患特異的iPS細胞において、疾患の病態メカニズムの解明を行うべく、特定の細胞系列への分化誘導を行い、発症原因を探索すべく基礎的解析を行う。さらに、人工ヌクレアーゼ技術を用いたゲノム編集技術を応用し、改変iPS細胞株の作製を行うともに、各種解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年3月までに人工ヌクレアーゼを用いて疾患特異的iPS細胞のミスセンス変異部位の配列遺伝子改変を検討していたが、現在改変iPS株の作製に苦渋しており、作製に時間がかかっているため、その後の分化誘導実験等に移行できず、本年度使用額に残額が生じ、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
今後は次年度繰越額を用いて人工ヌクレアーゼの再作製を実施し、iPS改変株の取得を目指す。それらの作製に係る物品および消耗品に繰越額を使用し、分化誘導実験等について検討する予定である。
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