研究課題
これまでヒトES細胞やiPS細胞は、フィーダー細胞上で血清添加培地を用いて培養されることが多く、不安定要素や異種抗原、未知の感染性因子の混入等の問題もあるため、細胞増殖・分化制御機構やその制御因子を比較検討することは非常に困難であった。このような培養条件下で培養されたヒト幹細胞では、増殖因子・分化誘導因子の機能を比較することが困難であり、臨床応用の面では安全性が問題であった。そこで、動物由来成分や代替血清などを含まず、全組成が明らかな無血清培地(hESF9)を基本培地として、フィーダー細胞および血清成分を使用せず、我々の開発した無血清培地(hESF9)を用いて、ヒトiPS細胞の未分化性と多分化能を維持可能な無血清培養系を確立した(Yamasaki S.et al. PLosOne 2014)。さらに、同培養系を用いて、ゲノムDNAへの遺伝子挿入がなく、ウイルスの確実除去が可能なセンダイウイルスベクター(SeVdp(KOSM)、SeVdp(KOSM)302L)を使用し、完全無血清培養系にてヒトiPS細胞の誘導が可能となった。また同ベクターは初期化4遺伝子が同一ベクター上に搭載されているため、誘導効率が安定しており、質の高いiPS細胞を高効率で誘導可能となった。そこで本培養系を用いて鎖骨頭蓋異形成症(CCD)由来iPS細胞を誘導し、樹立維持に成功した(Yamasaki S.et al. InVitroDevBiol 2015)。センダイウイルスを使用することで、ゲノムDNAへウイルス由来遺伝子挿入がなく、腫瘍化の原因と成り得ない安全なヒトiPS細胞の樹立が可能となり、さらに無血清培養系において動物由来蛋白を含まず、感染症等の恐れのない安全で高品質のヒトiPS細胞の供給が可能となったことで、難病の原因究明や治療法の開発を目指した疾患研究、医薬品の安全性試験などへの利用、細胞製剤の開発などの創薬研究、神経や血液・組織や臓器の機能修復や再生を目指した再生医療への応用を推進する上で有利となる。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件)
In Vitro Cell.Dev.Biol.―Animal
巻: - ページ: -
10.1007/s11626-015-9968-x
日本口腔組織培養学会誌
巻: 25(1) ページ: 21-22
巻: 25(1) ページ: 23-24