ヒト口腔扁平上皮癌を移植したヌードマウスに合成 siCDCA5 を投与し、抗腫瘍効果の有無と主要臓器に及ぼす影響について検討を行った。合成核酸の送達媒体は、北海道大学大学院薬学研究院医療薬学部門医療薬学分野薬剤分子設計学研究室原島秀吉教授らが開発した多機能性エンベロープナノ構造体(Multifunctional Envelope Nano Device: MEND)およびアテロコラーゲンについて予備検討を行ったところ、アテロコラーゲンの導入効率が良かったため、in vivo ではアテロコラーゲンを送達媒体として使用することとした。 GFP-SAS 細胞をヌードマウスの背部皮下に移植し、1 週間後に siRNA とアテロコラーゲンを混和し、腫瘍周囲への局所投与を行い、腫瘍抑制効果を評価した。その後、ヌードマウスを犠牲死させた後に、形成された腫瘍を取り出し、ウエスタンブロット法にて CDCA5 蛋白質の発現抑制効果について検討した。その結果、siCDCA5 投与群はコントロール群と比較し、有意な腫瘍抑制効果を認めた。さらに、siCDCA5 で処理した腫瘍では CDCA5 蛋白質の発現低下を認めた。主要臓器 (肺、肝、腎) に及ぼす影響を病理組織学的に検討するとともに、各臓器より total RNA を抽出し、qRT-PCR 法を用いて合成核酸投与によるインターフェロン応答および毒性の有無について評価をしたところ、合成核酸投与によるインターフェロン応答は認めなかった。 これまでの研究結果より、CDCA5 は口腔扁平上皮癌において有意に発現亢進しており、CDCA5 の発現阻害は著明に口腔扁平上皮癌細胞の増殖を抑制することより、CDCA5 が口腔扁平上皮癌の新たな治療標的分子となる可能性が示唆された。
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