研究課題/領域番号 |
26861733
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田中 昭彦 九州大学, 大学病院, その他 (70615799)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | シェーグレン症候群 / HTLV-1 / サイトカイン / ケモカイン |
研究実績の概要 |
HTLV-1はシェーグレン症候群 (SS)の約3割がキャリアであり、以前よりSSの発症に関与していることが示唆されていたが、その詳細についてはいまだ不明である。近年ではHTLV-1のケモカインを介した細胞依存性感染が注目されていることから、本研究では、抗 HTLV-1抗体陽性SS患者と陰性SS患者の臨床像および免疫学的所見について比較検討を行った。唾液腺造影では進行例が多く、口唇腺組織でもリンパ球浸潤は強かった。血清学的所見では、リウマチ因子や抗核抗体、抗SS-A抗体の陽性率に有意な差はなかったが、抗SS-B抗体は優位に低かった。HTLV-1がコードするTaxの作用により、ICAM-1 が細胞膜上に強く発現し、MDC が大量に産生分泌され、CCR4 陽性 T 細胞が選択的に遊走されるという報告がある。遊走してきた CCR4 陽性 T 細胞はICAM-1を介して HTLV-1感染 T 細胞と強固に結合するとされている。そのため、MDC、TARC、CCR4についてもその発現と局在を検索した。その結果、抗HTLV-1抗体陰性SS患者では、TARCおよびMDCは導管内とその周囲に、CCR4は導管周囲のリンパ球に発現を認めた。一方、抗HTLV-1抗体陽性SS患者では、リンパ球の浸潤が軽度であるにもかかわらず、TARCおよびCCR4は導管周囲のリンパ球に発現を認めたが、MDCはほとんど発現していなかった。 HTLV-1がTARC/CCR4シグナルを介してSSの病態形成に関与していることが示唆され、非感染SS患者と全く異なった機序で発症する可能性も考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、抗 HTLV-1抗体陽性SS患者と陰性SS患者の臨床像および免疫学的所見について比較検討を行った。HTLV-1陰性SS患者とHTLV-1陽性SS患者では症状やリンパ球浸潤など共通する点もあるものの、その浸潤リンパ球の種類や胚中心の形成、導管破壊の有無など異なる点も見られることから実際には病態の形成が異なっているのではないかと考えている。しかし、HTLV-1のSSの病態への関与については未だ明らかにできていない。来年度はさらに症例を増やし、またマイクロアレイを用い関連因子の検索を行っていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
HTLV-1陽性SSとHTLV-1陰性SSの浸潤リンパ球の組成分析(免疫組織染色など)、また浸潤T細胞からのサイトカイン分泌などの解析(ELISA法、フローサイトメトリーなど)を行い細胞の機能的な側面からも集積細胞の働きを明らかにし病態解明の一助とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は旅費として計上していた予算を執行しなかったため、次年度への繰越金とした。
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次年度使用額の使用計画 |
来年度は研究結果を発表するために使用する予定である。
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