研究課題
内在性の低分子RNAであるmicroRNA(miRNA)は、遺伝子発現を精巧に調節していることが明らかになりつつあり、その制御システムの異常は癌の発生・進展にも大きく関わることが明らかになっている。一方、口腔扁平上皮癌(OSCC)において、癌細胞の浸潤・転移は患者予後を大きく左右しており、その調節機構の解明は癌治療の発展において重要である。我々はこれまで、高転移口腔扁平上皮癌(OSCC)細胞株を樹立し浸潤・転移の研究を進めてきた。本研究では口腔扁平上皮癌(OSCC)の浸潤・転移機構を制御するmiRNAを同定し、そのmiRNAを中心とした新たな分子ネットワークの解明を目的とした。本研究期間中に、①高転移性OSCC細胞株のmiRNAアレイから癌抑制型miRNA(以下、miR-X)を同定した。②miR-XはOSCCの浸潤能を制御していることが示唆された。③miR-X高発現OSCC細胞株のcDNAマイクロアレイ解析から浸潤・転移関連遺伝子IMR-1(仮称)を同定した。IMR-1はmiR-Xによって発現抑制を受けていた。④IMR-1発現量はOSCC臨床検体において浸潤様式、患者予後と相関し、in vitroでOSCC細胞株の浸潤能を制御していた。⑤miR-X高発現細胞株の同所異種移植実験にて、miR-XがOSCC細胞の転移能を顕著に抑制していた。以上より、癌抑制型miRNAによる浸潤・転移関連分子の発現制御を介したOSCC進展機構の一端が明らかとなった。また、併せてOSCCの発生・進展に関わる複数のマイクロRNAやその標的遺伝子がOSCC患者の病態に与える影響について、若干の知見を得ることに成功した。なかでも、炎症性サイトカインIL-6については、各種アレイ結果からOSCCの治療抵抗性に深く関与していることを見出し、学会発表を行った。
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