研究課題/領域番号 |
26861741
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
足立 哲也 京都府立医科大学, 医学部附属病院, 研究員 (10613573)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ナノゲル / MDSC / VEGF-A |
研究実績の概要 |
腫瘍が形成する微小環境は、毛細血管が豊富で抗癌剤の効果が十分に得ることができないとされている。多くの腫瘍細胞が産生する血管内皮細胞成長因子(VEGF :Vascular Endothelial Growth Factor)は、血管新生等を促すことで腫瘍微小環境を形成する。また、VEGFはミエロイド由来サプレッサー細胞(Myeloid Derived Suppressor Cell :MDSC) の腫瘍局所への集簇を促し、抗腫瘍免疫を抑制する。VEGF-A は癌細胞の増殖、血管新生、 抗腫瘍免疫を抑制するMDSC の分化誘導、増殖に関わる重要な因子である。そのため、VEGF-Aを制御することで、腫瘍微小環境を改変し、抗腫瘍免疫を増強することが期待できる。 近年、VEGF-Aを標的とした分子標的治療薬(抗体、シグナル伝達阻害薬)の登場により、癌の治療成績が上がってきている。しかしながら、それらは全身投与であり、その標的が癌細胞特異的でないため、出血、血栓症、消化管穿孔、創傷治療の遅延等の副作用が出現する。 本研究は、これらの問題を解決するため、担体ナノゲルを用い、腫瘍局所で薬剤を効果的に送達することが出来る新規の癌免疫療法を開発する。研究実施計画としては、平成26年度はIn vitroの系において、ナノゲルを用いて、VEGF-A特異的なsiRNA(siVEGF)をマウスがん細胞に導入する。平成27年度は、担癌マウスにおいて、ナノゲル/siVEGF-A複合体を投与し、腫瘍のVEGF-A遺伝子の発現、腫瘍内の血管新生、血清中のVEGFのタンパク量、腫瘍内、リンパ節でのMDSCの割合等を評価する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
頭頸部扁平上皮癌患者では末梢血中の VEGF-A の増加に伴い、MDSC の割合が増加することが報告されている。このことよりVEGF-Aが頭頸部扁平上皮癌の治療標的になり得ると考えた。しかしながら、我々が調べたマウス口腔癌細胞株では、VEGFの産生は認められなかった。一方で、VEGF-Aを産生するマウス腎細胞癌細胞株 Renca細胞では、ナノゲルを用いたsiVEGFの導入をin vitro、in vivoの両方で成功している。 現在、他のVEGF-A産生マウス口腔癌細胞株を探索し、同様の実験に使用する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
VEGF-A産生マウス口腔癌細胞株がない場合、Xenograft の系でVEGF-A遺伝子の発現を抑制し、腫瘍増殖、血管新生を評価する。具体的には、VEGF-A産生ヒト口腔扁平上皮癌細胞株HSC-2を免疫不全マウスに移植し、腫瘍内にナノゲル/siVEGF-A複合体を投与し、腫瘍のVEGF-A 遺伝子の発現を抑制する。腎細胞癌のモデルにおいてナノゲル/siVEGF-A複合体の投与はVEGF-Aの発現を抑制し、腫瘍の増殖抑制、腫瘍内とリンパ節でのMDSCの増殖を阻害することを確認した。ナノゲルを用いた腫瘍微小環境でのVEGF-A の抑制は、腫瘍増殖の抑制、抗腫瘍免疫の増強、さらに副作用の軽減が期待できる。
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