慢性疼痛は患者にとって大きな苦痛を伴い、生活の質(QOL)を著しく低下させるにもかかわらず、その発症・増悪・慢性化の機序は未だ不明な点が多い。口腔顎顔面領域を担う歯科臨床でも慢性口腔顎顔面痛はその解明が望まれる重要な課題となっている。血管内皮細胞由来ペプチドとして発見されたエンドセリンが、最近、神経傷害や炎症、癌などで、その発症部位や血液中に高濃度に存在することが明らかとなり、生体の侵害受容に極めて重要な関与をしていることが強く示唆されている。本研究の目的は、口腔顎顔面領域のエンドセリンの疼痛への関与を明らかにし、口腔顎顔面領域の難治性慢性疼痛の発症機序解明と新たな治療展開を目指すことにある。ラット鼻毛部にエンドセリン-1を投与することによって、疼痛関連行動の1つである顔面グルーミング時間が延長し、エンドセリンの口腔顎顔面領域の疼痛への関与が示唆された。また本研究では神経障害性疼痛におけるエンドセリンの影響を検討するため、ラット下歯槽神経を切断ならびに結紮する、神経障害性疼痛モデルラット(切断)と神経障害性疼痛モデルラット(結紮)を作製した。今後これらのモデルラットでのエンドセリンの影響を検討する展開を計画している。
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