研究課題
本研究は、粘膜類天疱瘡の自己抗原候補である BP180C末端部領域に着目し、同抗原が本疾患に特異的因子であるか否かを、多数の粘膜類天疱瘡患者血清を用いて明らかにするべく、遂行中である。今年度は、患者血清中のBP180C末端部に対する自己抗体を検知する為にELISAの開発を行った。まず大腸菌発現系を用いてBP180C末端部リコンビナントタンパクの作製を開始し、十分な量のタンパクを作製した。さらに作製したリコンビナントタンパクを用いて感度および特異度の高いELISAを開発中である。また、一方で久留米大学に保存されている粘膜類天疱瘡患者の臨床情報を収集し、集計および統計を開始した。今回、大きく進捗が得られたのは、BP180C末端部ELISAの開発である。コントロール患者血清およびポジティブコントロール患者血清を用いた検討において、比較的バックグラウンドが低く、感度の高いプロトコールを作製し、BP180C末端部に対する自己抗体の有無を、多数かつ少量の血清サンプルで検討することが可能となりつつある。一方、久留米大学に保存されている水疱症患者血清のうち粘膜優位に水疱を生じた患者のうち十分な臨床情報が確認できたものは300症例程度であった。今後は粘膜類天疱瘡を含めた各種水疱性疾患患者の血清を用いてBP180C末端部ELISAを施行し、同疾患とBP180C末端部との関連を検討する。また臨床情報および血清学的検査の統計を行う。本課題の研究結果は粘膜類天疱瘡の新規診断法および治療法の開発へ応用できる可能性を有する。
3: やや遅れている
平成26年4月より久留米大学から九州大学へ異動した。申請時との実験環境の変化があり、研究の開始が一時停止せざるをえない状況であったため、若干の遅れが生じている。しかしながら、新規ELISA開発の進捗状況は比較的順調であり、バックグラウンドが低く、特異度の高いELISAが確立されつつある。一方で、臨床検体を用いた実験および臨床情報の集計にあたっては、膨大な資料の収集が必要であり、若干の遅れが生じているが、平成27年度に当初の計画通りに統計解析を完了できる見込みである。
平成26年度に確立した感度および特異度の高いELISAを用いて粘膜類天疱瘡患者血清およびその他の水疱性疾患患者血清を用いて同ELISAが粘膜類天疱瘡の新規診断法となりうるかの検討を行う。また並行して、今年度から引き続き多数の粘膜類天疱瘡患者の臨床データの集計および臨床学的統計を行い、疾患の特徴および各種検査結果との関連性を検討する。以上のことから粘膜類天疱瘡の新たな知見を明らかにするとともに的確な診断法および治療法の開発を探求する。また平成27年度に国内外の専門誌へ成果発表を行う。
平成26年4月より久留米大学から九州大学への異動があった。所属変更に伴い、研究の開始がやや滞った。新規ELISAはほぼ確立できたが、粘膜類天疱瘡患者血清を用いた検討は未施行であり、次年度へ繰り越した。
上記に記した研究の滞りは解消されつつある。昨年度、使用予定であった試薬や消耗品を平成27年度に購入、使用することで研究は順調に進めることが可能であり、当初の研究計画に沿った研究内容の遂行を行う予定である。
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