研究課題/領域番号 |
26861766
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
菅原 優 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (00636954)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 歯髄幹細胞 / オリゴデンドロサイト / PDGF / BMP / 再生 / 歯 |
研究実績の概要 |
これまでの研究によって、歯髄中に歯髄幹細胞と呼ばれる多能性を有した細胞の存在を明らかにし、フローサイトメトリー法を用い歯髄幹細胞株(SP細胞)の作製に成功してきた。このSP細胞に血小板由来増殖因子(PDGF-BB)で刺激することによって、オリゴデンドロサイトの分化マーカーのmRNAが誘導されることが、予備実験より分かっている。そこで、効率の良いPDGF-BBの刺激条件の検討を行い、また受容体シグナルの同定を抑制剤やsiRNA法を用いて解析し、この分化誘導機構の解明を本研究の目的とした。 これまでに、PDGF-AAでSP細胞を刺激すると、象牙芽細胞の分化マーカーであるDSPPのmRNAの発現を誘導し、PDGF-BBで刺激するとオリゴデンドロサイトマーカー遺伝子の発現を誘導する一方でDSPPのmRNAの発現が減少する事が分かった。さらに、PDGF-BBはBMP2刺激によるSP細胞のDSPPのmRNAの発現上昇をも抑制することが明らかとなった。ウェスタンブロット法、siRNA法を用いてPDGF受容体下のシグナル伝達経路を解析したところ、PDGF-AAでp38のリン酸化が強く誘導される一方で、PDGF-BBで刺激した場合にはERK1/2、p38、Aktが強くリン酸化される事が明らかとなった。また、PDGF-BBはBMP2によるsmad5のリン酸化促進の抑制を抑制する事が明らかとなった。 これより、PDGF-BBはPDGF-AAと役割が異なっており象牙芽細胞分化の抑制因子であり、分化マーカーの発現の違いよりオリゴデンドロサイト分化に関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
歯髄幹細胞を象牙芽細胞へ分化させる目的でBMP2でSP細胞を刺激すると、象牙芽細胞の分化マーカーであるDSPPのmRNAの発現を誘導する。歯髄幹細胞が頭部神経堤由来細胞でありそのマーカー分子であるPDGFRαを発現している事からPDGF-AAもしくはPDGF-BBでSP細胞を刺激すると、PDGF-AAでは象牙芽細胞の分化マーカーであるDSPPのmRNAの発現を誘導し、PDGF-BBではオリゴデンドロサイトの分化マーカーであるOlig2のmRNAの発現が誘導される一方で、DSPPのmRNAの発現が減少する。さらに、PDGF-BBで刺激する事によってBMP2によるDSPPのmRNAの発現上昇をも抑制することが明らかとなった。また、ウェスタンブロット法を用いて、PDGF-BBはBMP2によるsmad5のリン酸化促進の抑制を抑制する事が明らかとなった。 これより、PDGF-BBがSP細胞の象牙芽細胞分化を抑制し、オリゴデンドロサイトへ分化誘導する可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
今後、主にin vitroの系を用いて、オリゴデンドロサイト分化におけるSP細胞の培養細胞数、培養面積、刺激時間や刺激のタイミングなどの培養条件の検討をolig2の発現を指標にして検討する。さらに、神経細胞の分化マーカー遺伝子であるNestin、Plp-1、NF、Olig2、Dcx、A2B5、CNPase、Apc、MbpなどのmRNA発現解析を、RT-PCR法を用いて行っていく。蛋白についてもウェスタンブロッチング法およびフローサイトメトリー法、免疫染色法を用いて、その発現と誘導について検討を行う。また象牙芽細胞分化抑制の詳細なメカニズムも明らかにしながら、オリゴデンドロサイト分化の受容体シグナルの同定を抑制剤やsiRNA法を用いて解析しその分化機構を明らかにしていく。同時に、この歯髄幹細胞(SP細胞)の、いわゆる神経幹細胞としての特徴や特性について、神経系の前駆細胞マーカーの発現や変化について、神経栄養因子(NGF)刺激した場合との比較検討も行いながら検討していく。 続けて、脊髄損傷モデルの作成と移植再生実験を進めていく。今後、動物実験計画の承認を得る予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外での学会発表、論文の投稿の準備を予定していたが、その機会が得られなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
海外での学会発表、論文の投稿準備を進めていく予定である。
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