研究課題
これまでの動物実験において、成長期における咬合異常が副腎皮質ホルモンであるグルココルチコイドを増加させることが報告されてきた。過剰のグルココルチコイドは、成長期において骨成長抑制と骨の脆弱化を引き起こすため、咬合異常が全身の骨代謝へ影響を与えている可能性は大きい。我々は既にマウス咬合異常モデルを確立し、咬合異常が全身の骨密度に影響を与える一定の成果を確認してきたが、今回は骨代謝マーカーを使用した生化学的解析などを用いて咬合異常と全身の骨代謝との関連性におけるメカニズムの詳細をさらに明らかにしてゆく計画で実験を行った。実験動物としては成長期である5週齢のC57BL/6 miceを用い、咬合異常モデルは上下顎切歯にレジンを築盛することで作成した。まずは過去の報告通り、咬合異常付与後に血中のグルココルチコイド濃度が有意に増加していることを確認した。今回、咬合異常に伴う血中グルココルチコイド濃度の上昇を経時的に観察したところ、次第に減少してゆくことが分かった。マイクロCTを用いた大腿骨頚部の骨微細構造の解析により、咬合異常マウスにおいて対照群と比較して有意な骨量減少が認められ、全身の骨に対しての影響が確認された。また、脛骨において石灰化速度や骨形成率といった動的パラメータを評価したところ、咬合異常群ではそれらの有意な減少が認められ、咬合異常付与に伴い全身の骨形成抑制が引き起こされていることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していた血清マーカーの評価が来年度へと計画変更になったが、全体としては概ね順調に推移している。
咬合異常付与に伴い骨形成抑制が認められたため、今後は骨吸収系の評価を行うとともに、生化学的解析により血清オステオカルシンやTRACP-5bなどの骨代謝マーカーの評価を行う。
当初計画していた研究計画の推進に若干の変更があり、方策検討等によって当該年度使用額が予定額よりも少なくなったため。
今回生じた次年度使用額は、当初予定していた研究計画を推進させるべく試薬購入の経費に充てる予定である。
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The Korean Journal of Orthodontics
巻: 44(5) ページ: 263-267
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Archives of Oral Biology
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