先天性疾患には、遺伝的要因と環境要因との相互作用によって発症する多因子疾患が多数存在する。近年、環境因子によるエピゲノム情報の変化が、疾患を引き起こすという報告がされているものの、顎顔面領域における先天性疾患とエピゲノムについての報告は少ない。そこでエピゲノムの変化を修飾する酵素であるG9aの顎顔面領域における役割を解明することにより先天異常の発症原因の解明、夜方法の開発等の臨床応用への基盤となる研究となることを目的とした。 平成26年度の形態解析等で神経堤細胞由来の骨の低形成を明らかにした。また、in vitroの系で行った実験においても同様な所見が得られたため、平成27年度ではG9aの骨芽細胞分化に対する影響を検討することとした。in vitroの系にてG9aの阻害剤を用い、遺伝子発現の変化を確認した所、未分化の骨芽細胞に発現しているTwist1の発現上昇、骨芽細胞の分化マーカーの減少が認められた。一般的にG9aは、ヒストンH3の9番目のリジン残基をメチル化し、遺伝子発現を負に制御することが知られている。そこで、上昇した遺伝子であるTwist1の遺伝子発現制御にG9aがどのように関与しているかを把握するため、クロマチン免疫沈降法を用いて、Twist1のプロモーター付近でのヒストンH3の9番目のリジン残基におけるメチル化状態を確認した所、G9a阻害剤を用いた細胞ではメチル化状態がさがっていることが確認できた。このことより、G9aはTwist1の発現を制御することにより骨芽細胞の分化を制御している可能性が示唆された。
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