研究課題/領域番号 |
26861774
|
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
水町 真理子 東京医科歯科大学, 歯学部, 非常勤講師 (00706955)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 唾液腺 / アクアポリン / 咀嚼 |
研究実績の概要 |
唾液は多くの役割を有しており、その分泌低下は口腔乾燥症を引き起こし、著しいQOLの低下を招く。歯科領域と関連の深い咀嚼は唾液分泌を促進するだけでなく、唾液腺の分泌機能維持にも重要であると考えられている。本研究では、咀嚼による唾液腺の機能維持・回復メカニズムの一端を解明するため、アクアポリンという水チャネルに着目し、咀嚼機能低下状態およびその回復過程におけるアクアポリンの動態を検討することを目的としている。 初年度はまず、実験モデルの作成を行った。ラット上顎前歯部にバイトプレート、下顎前歯部にメタルキャップを装着して、臼歯部での接触を排除したものを、咀嚼機能低下モデルとして用いた。実験開始後1週間後、2週間後、4週間後に屠殺を行い、湿重量の測定および、HE染色による組織学的な変化の評価を行った。またバイトプレートを2週間装着し、その後装置を除去し、2週間後に屠殺を行ったものを回復モデルとして用い、同様の観察を行った。 その結果、咀嚼機能低下群ではコントロール群に比べて、顎下腺、舌下腺、耳下腺ともに唾液腺湿重量の増加が認められた。また回復群では、コントロール群に比べて湿重量は大きい値を示すものの、コントロール群に近づく傾向が見られた。HE染色では咀嚼機能低下群で顎下腺、耳下腺で腺房細胞の肥大化が認められた。 しかしながら、バイトプレートを用いたモデルを用いると、実験期間中にラットが口を閉じることが困難な状況であり、口腔乾燥状態が唾液腺に及ぼす影響を無視できない可能性があるため、今後実験モデルとして慎重に検討する必要があると考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
咀嚼機能低下および回復を行うことのできる実験モデルの確立に時間がかかっている。 当初、咀嚼機能低下モデルとして、液状飼料飼育を行うことを計画したが、飼料自体の含水量の違いが、唾液腺へ及ぼす影響が大きいと考え、バイトプレートを装着する実験モデルへと変更を行った。しかしながら、バイトプレート装着によって、口腔乾燥状態が引き起こされるとともに、著しいストレス状態に置かれるため、それらの因子が唾液腺の機能に影響を及ぼす可能性が無視できない。そのため他のモデルも合わせて検討する。
|
今後の研究の推進方策 |
N数を増やすとともに、粉末飼料飼育を行って咀嚼環境を変化させたモデルを実験モデルとして検討する。 また、アクアポリン3、5、8の免疫組織学的および生化学的な評価を行う。とくに、アクアポリン5はラット唾液腺に多く存在しており、その発現および分布の変化は唾液分泌機能に大きな影響を及ぼす。また、アクアポリン3や8などは唾液腺での発現は認められているものの、その役割は明らかになっておらず、咀嚼機能低下状態および回復過程における動態を明らかにすることは、意義のあるものと考えられる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ラットの唾液分泌量測定のための装置を購入予定であったが、実験モデルの選定に時間がかかっており、本年は購入を行わなかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
これまでの研究結果発表のための学会発表出席、論文投稿、およびin vivoの実験に必要な機器、試薬費として研究費を使用予定である。
|