研究課題/領域番号 |
26861775
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
駒崎 裕子 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 医員 (20707476)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 出生コホート研究 / 顎顔面形態 / 不正咬合 / 3次元計測 |
研究実績の概要 |
本研究では、出生コホート研究により、一般集団における思春期の子どもの顎顔面形態を分析し、妊娠期ならびに小児期の社会・環境要因との関連性を検討すると同時に、不正咬合が健康状態に与える影響を明らかにすること、さらに既に得られている同一人種であるモンゴル人の顎顔面軟組織形態と比較検討するためのデータベースを構築することを目標としている。 本研究は日本において20年以上継続して行われている数少ない大規模な出生コホート研究「甲州市母子保健縦断調査」の追加調査として、山梨県甲州市の全中学生を対象として行われる。評価項目は以下の項目である。 1.妊娠期の母体の環境が思春期の子どもの顎顔面形態に与える影響について評価する。(1)不正咬合の実態調査;Index of Orthodontic Treatment Need (IOTN)を用いて評価する。(2)顎顔面軟組織形態の三次元計測;三次元非侵襲的撮影装置を用いて撮影する。(3)妊娠期及び小児期の社会・環境要因のデータとリンケージを行い、不正咬合の発症要因に関して疫学的手法を用いて解析する。 2.顎顔面形態が思春期の子どもの健康状態に与える影響について、健康状態の評価、抑うつ傾向、起立性調節障害、頭痛及び口腔関連のQOL(機能・心理面・疼痛/不快・社会面)を質問紙を用いて調査し、不正咬合の形態・機能的な問題点及び審美・社会的問題点が思春期の子どもの身体及び精神の健康状態に与える影響について疫学的手法を用いて解析する。 3.日本人の思春期における顎顔面軟組織形態に関するデータベースの構築を行い、研究代表者等により、既に得られているモンゴル人の顎顔面軟組織形態の三次元データと比較検討を行い、同一人種であるが異なる社会的要因・生活環境等が顎顔面形態へ与える影響について評価する。 平成28年度は前年度に行った実態調査の結果の解析および学会発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は、平成27年度に実施した甲州市中学校における不正咬合の実態調査及び質問紙調査の結果の解析、学会発表を行った。 甲州市立中学校全5校に在籍し健康診断の欠席者を除く全ての生徒(966名)を対象として、各校の学校歯科健診時に、矯正歯科医が矯正治療必要度指標(Index of Orthodontic Treatment Need)に準じて、不正咬合の診査を行った。同時に、触診による顎関節雑音の有無、顎関節痛および開口障害の有無を調査し、いずれか一つでも該当する場合に顎関節症と評価し、不正咬合と顎関節症の関連性について検討した。不正咬合の発症率は44.7%であり、顎関節症の有症率は12.0%であり、不正咬合を有する群で15.1%、不正咬合を有さない群で9.6%であった。不正咬合を有する群は有さない群より、顎関節症の有症率が高かった(adjusted Odds Ratio [OR], 1.65; 95%CI, 1.11-2.44)。また、上顎前突および過蓋咬合と顎関節症との間に有意差を認めた(adjusted OR, 1.97; 95%CI, 1.03-3.76、adjusted OR, 2.19; 95%CI, 1.06-4.53)。 現在モンゴルのデータとの比較検討、および甲州市母子保健縦断調査の出生時や幼少時のデータとのリンケージを行うべく準備中である。 また、より詳細な検討を行うために、平成29年度再度実態調査を行うこととしたため、調査の準備を行った。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は不正咬合の実態調査を行うとともに、以下の手順でデータのリンケージを行い、データ解析を進める。 1.学校歯科健診時(平成29年4-6月)に、不正咬合の診査を2名の矯正歯科医(東京医科歯科大学)が直接法にてIOTNを用いて行い、質問紙による調査(口腔関連QOL)を行う。同時に顎関節の診査も行う。また、甲州市母子保健縦断調査思春期調査(平成29年7月)時に、質問紙による調査(生活習慣や健康状態について)を行う。 2.実態調査で得られたデータは甲州市地域保健センターに送られ、既存のデータに追加され、リンケージ・匿名化・ID化された状態で山梨大学、東京医科歯科大学へ移動され、統計学的見地から顎顔面形態に影響を与える妊娠期及び小児期の環境要因ならびに顎顔面形態と思春期の子どもの健康状態との関連性の評価を行う。さらに、同一人種であるが異なる環境に生活する思春期の日本人とモンゴル人の児童の顎顔面軟組織形態の比較検討を行うことで、社会・環境要因が顎顔面形態に与える影響を検索する。得られた結果に関しては、随時学会発表や論文執筆をすすめていく。 また、調査時間の制約等のために平成27年度に行わなかった三次元非侵襲的撮影装置(Morpheus)を用いた顎顔面軟組織形態の計測と保護者を対象とした詳細な質問紙調査に関しては、引き続き学校や研究協力者である山梨大学の先生方と実施に向けて調整を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
3次元軟組織形態計測を後日希望校、希望者のみに行う予定であったが、学校等の事情により、スケジュールを組むことが困難であったため、次年度以降に行うこととしたため。 また、より詳細な検討を行うために、調査人数を増やす必要性が生じたことにより、再度実態調査を行うことにしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度の実態調査のための、物品準備や調査の旅費などに使用する。
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