研究課題/領域番号 |
26861783
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
岡本 奈那 神戸大学, 医学部附属病院, その他 (60645216)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 先天異常疾患 / 歯科 / 顎顔面 / 奇形 |
研究実績の概要 |
先天異常疾患の約3分の1の症例は、顎顔面になんらかの奇形を伴うことが言われている。顎顔面の奇形は、機能面のみならず審美的問題から社会的要因を含むため、その原因の解明は治療への影響が大きい。 今回、顎顔面領域に奇形を伴うがその原因が不明であり、遺伝的要因が強く疑われる患者を対象に収集を行い、全ゲノムに対して網羅的に探索を行い、原因遺伝子の同定を行うことを目的とした。 年間の症例収集数は男性7名、女性9名の計16名であった。その内訳は、多数歯欠損家系症例(男性2名、女性4名)、鎖骨頭蓋異骨症疑いで原因遺伝子RUNX2の変異が確認されなかった一例(女性1名)、外胚葉異形成症候群疑いで原因遺伝子EDARに変異を認めなかった一例(女性1名)、眼振を伴う兄弟例(男性3名)、臨床診断から黒色表皮症を伴うクルーゾン症候群と診断されている親子例(男性1名、女性1名)、眼症状と粘膜下口蓋裂を伴う家系症例の親子例(女性2名)、およびレントゲン写真から基底細胞母斑症候群が疑われた一例(男性1名)であった。臨床診断からほぼ確定診断されていたクルーゾン症候群、Stickler症候群および基底細胞母斑症候群以外は、いずれも報告のある原因遺伝子には異常は見つけられず、さらに全ゲノム検索を施行した(次世代シーケンサー解析、アレイ解析)結果、眼新を伴う兄弟例については原因遺伝子が特定されたが、その他の症例は疑われるような候補遺伝子や候補領域の特定には至らなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
疾患の収集と疾患原因遺伝子の探索ならびに同定は、予定を超えて進めることができた。特に、基底細胞母斑症候群の一例は新規変異であったことから、学会誌へ新規変異の報告およびデータベースへの登録を行った。また、眼振を伴う兄弟例に関しては、日本人での報告はない変異であったため、学会誌への報告とデータベースへの登録を行った。 しかし、候補遺伝子のある場合ない場合とも、遺伝的異質性からか全てに変異遺伝子が得られるわけではないこともわかり、今後の疾患のリクルートに対して有用な情報の積み重ねが行えた。一方、これに伴う表現型に対する遺伝子の機能的な影響に関しては、得られた変異がモデル動物作製による再現が難しいなど困難な点が多く、さらに原因遺伝子の同定を進める必要があった。
|
今後の研究の推進方策 |
解析結果から得られたStickler症候群は、これまでの報告例と比較して当該症例は症状にばらつきがあり、変異箇所と症状との連関性の解明を行う予定である。そのため、家系解析を進めるとともに、同疾患の症例収集を他施設連携のもと行っている。 FRMD7が原因遺伝子として同定された眼振を伴う兄弟例については、遺伝形式の解明と原因遺伝子であるFRMD7が未だ症状との連関性が証明されていないため、比較検討を継続するとともに動物モデルによる遺伝子の機能解明を行う計画である。 これまで同様に症例収集は継続する。これは、原因同定に至らなかった症例に対しては類似症例の収集から糸口となる探索アプローチができるように、また原因不明疾患のさらなる原因特定のために継続する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
原因遺伝子については機能解析のために、動物モデルを検討しており、本来次年度から開始する予定であったが、遺伝子の同定結果が早めに得られたことから、本来の計画から前倒しで着手したことにより、それらにかかる費用を計上した。
|
次年度使用額の使用計画 |
前年度と同様に継続した症例収集を行い遺伝子解析(全ゲノムシーケンス、PCR法、アレイCGH法)を施行予定である。また、機能解析(ゼブラフィッシュを用いたモルフォリノオリゴ実験、胎児期マウスを用いたin situ Hybridization)を対象遺伝子に対して行っていく予定である。
|