ゲノム解析研究の進歩に伴い、疾患関連因子のみならずあらゆるゲノム情報の集約が飛躍的に進んでいる。これらの成果によって、これまで原因不明とされてきた疾患に対して診断に寄与する一方で、未だ確定診断のつかない症例が全体の3割あることが示唆されている。また、健常と変異の表現型差が顕著でないものは、最終的な絞り込みが困難である場合が多く、さらなる症例やデータベースのアップデート等を待たなければならないのが現状である。そこで、今回われわれは、遺伝子型/表現型の関連解析を基盤とし、表現型として特に顔貌所見および歯科的所見から遺伝子型へのアプローチを網羅的に行うことで、原因遺伝子解明と診断モデルの確立を目的とした。 症例は神戸大学医学部附属病院を受診した、顔貌および口腔内になんらかの先天的な所見を有する原因不明の先天異常疾患患者、および当該分野では症例数が不十分と考えられたため、共同研究機関として徳島大学人類遺伝学分野の症例を対象とした。症例収集は当該研究期間を通して実施した。平成25年度の収集において、既知の手法で診断がつかなかった症例に対して原因遺伝子を同定し、それぞれ発表を行った。平成26~27年度にかけて、収集した症例の解析を進める一方、複雑な染色体構造異常を伴う症例の解析を進め、その構造的変化と組換え機序を同定した。 顔貌および口腔内所見からの表現型主体の症例収集を試みたが、ゲノムファーストになる結果も多く散見された。表現型の評価方法において、特に軟組織評価が主観的評価に偏ることが、定量的評価の妨げとなり、表現型から遺伝子型へのアプローチが困難となることが示唆され、今後の課題と考えられた。
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