初年度に難航していた下顎前方位モデルマウスの確立であるが、安定した結果を得られないことより、本年度はすでに当科で確立されていた下顎頭軟骨高負荷モデルへと切り替えて実験を行った。当モデルラットより関節軟骨を採取し、炎症の状態およびインテグリンの発現を確認した。高負荷モデルラットの軟骨をマイクロアレイにより検討した結果、FAKを初めとするシグナル伝達物質の発現促進を確認した。 軟骨細胞の検討については、モデルラットより採取した細胞の培養が困難であったことより、すでにCell Lineとして構築されている軟骨前駆細胞ATDC5を用いて実験を行った。まず初めに肥大期軟骨細胞に各種インテグリンが存在することをPCRにて確認した。我々はそのなかでも高発現していたインテグリンαVβ5に着目し、そのブロッカーであるcilengitideを用いて実験を行った。cilengitideはglioblastomaに対して臨床治験が行われれている。しかしがん治療にのみ研究が行われており顎関節症への応用はこれまでない。われわれはATDC5にFlexercell strain unitを用いて過度な機械的負荷を与えた場合のインテグリンを通じたシグナル伝達経路をウェスタンブロットで検討した。その結果FAKおよびNFk-βを介した経路が有力であることが分かった。さらに機械的負荷を加えたとき、同時にcilengitideを投与すると、インテグリンの阻害を通じてそれら経路が抑制されることが明らかになった。また最終的に炎症性サイトカインの発現も抑制することが明らかとなった。
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