研究課題/領域番号 |
26861790
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
赤澤 友基 徳島大学, 大学病院, 助教 (10646152)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 乳歯 / 歯髄細胞 |
研究実績の概要 |
<目的>歯髄にはう蝕や外傷などの様々な外的刺激に対して、修復象牙質を形成する自己修復能がある。歯髄の恒常性維持や再生には、間葉系幹細胞や血管内皮細胞の誘導機構が関与している可能性がある。ケモカインstromal cell derived factor 1α(SDF-1)は、間葉系幹細胞や血管内皮前駆細胞に対する遊走誘導に関与していることが知られている。今回の研究で我々はSDF-1のmRNA発現がFGF-2で抑制されることを示した。この抑制機構については明らかにされておらず、今年度はFGF-2によるSDF-1の発現抑制機構の解析を目的とした。 <材料と方法>歯髄細胞として、我々の樹立したヒト乳歯由来不死化歯髄細胞株SDP11を使用した。FGF-2によるSDF-1 mRNAの抑制機構の解析に、各種阻害剤を投与してその効果の検討を行った。 <結果及び考察>SDP11にFGF-2を投与すると、SDF-1の発現は抑制される。FGF受容体の阻害剤としてAZD4547を使用したところ、これはFGF-2の作用を阻害した。しかしFGF-2が直接関与すると考えられているシグナル系の阻害剤を用いたところ、FGF-2の作用を阻害しなかった。AZD1480 (Jak阻害剤) はFGF-2の作用を阻害した。しかし、下流のniclosamide (STAT3阻害剤)を使用してもFGF-2の作用を阻害しなかった。標的遺伝子のスクリーニングとしてprimer arrayを行った結果、FGF-2を投与した時にTransforming growth factor(TGF)の発現に変化が見られた。 今回、非常に多数の細胞内シグナル経路の探索を行ったが、FGF-2によるSDF-1の抑制メカニズムは明らかにならなかった。以上の結果から逆に、SDF-1の発現機構は多段階的に複雑なメカニズムが存在することが考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は昨年度樹立した不死化ヒト乳歯歯髄細胞株(SDP11)を使用し実験を行った。昨年度の結果よりSDP11は遊走誘導に関与するSDF-1を発現することが明らかになった。今年度は創傷治癒の初期段階で重要とされるFGF-2との関係を調べた。SDP11におけるSDF-1のmRNA量はFGF-2を投与すると有意に減少し、FGFRの阻害剤であるAZD4547を投与すると、FGF-2によるSDF-1の発現抑制は抑制されることが明らかとなった。そこで、FGF-2によるSDF-1の抑制機構について解析を行うために、FGF-2のdownstreamの因子の様々な阻害剤を投与して検討を行ったが、抑制をrescureする阻害剤を発見することができなかった。そのために、PrimerArrayを行ったところ、TGFの発現に変化を確認することができた。SDF-1の発現機構は多段階的に複雑なメカニズムが存在することが示唆されたことから、「おおむね順調に進展している」と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
H27年度の結果から、乳歯歯髄細胞が産生するSDF-1はFGF-2によって抑制されることが明らかになった。また、FGF-2によって抑制される機構にはTGFが関与していることが示唆された。TGFは増殖因子の1つであり、多数のシグナル経路を介して、細胞間ネットワークの構築に寄与しており、歯髄の再生および恒常性の維持に寄与していると考えられる。 SDF-1に対するFGF-2とTGFの関係を解析するにあたり、実際にTGFが発現していることを確認するために、conditioned medium中にTGFが存在することを確認する。その後、SDF-1に対するTGF発現とFGF-2の作用の関係を解析する。また、TGFは骨形成に関与していることから、細胞間ネットワークを解析することにより歯髄の再生と恒常性の維持について考察することができると考えられる。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入予定だった試薬の価格が残金を上回ってしまったため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の科研費が利用できるまでの間に必要な消耗品を購入する
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