研究課題
主たる研究に付随して次のような研究成果が得られた。含歯性嚢胞のような発育性嚢胞による骨吸収の分子メカニズムは明らかにされておらず、嚢胞内圧上昇による周囲組織への圧迫により骨吸収が生じると考えられている。細胞外圧力が嚢胞を構成する細胞にどのような影響を及ぼすか、圧迫培養法を用いて検討した。含歯性嚢胞の嚢胞内圧は約0.01MPa(約80mmHg)であったという報告から,含歯性嚢胞を構成する細胞種(歯原性上皮細胞株、歯肉線維芽細胞株、骨肉腫由来骨芽細胞株)に対して、37℃恒温槽内の密閉空間にて同圧をかけて培養することで,歯原性嚢胞を想定した圧迫培養を行った。病理組織を用いた免疫組織学的検討においては,RANKL陽性細胞は間葉系結合組織,とくに隣接する組織との境界付近に多く発現していた。また,Real time RT-PCR法を用いて、3および6時間の圧迫培養を行った各細胞について骨形成および骨吸収に関連する遺伝子のmRNA発現量の変化を解析したところ、持続的な低圧に対して間葉組織から骨吸収サイトカインが放出された。6時間圧迫を受けた骨芽細胞においては,むしろ骨形成に関連する遺伝子の上昇が認められた。歯原性嚢胞を想定した圧迫培養系において、骨吸収に関連する分子群の解析を行ったところ、持続的な低圧に対して間葉組織から骨吸収サイトカインが放出され、骨芽細胞においては、むしろ骨形成に関連する遺伝子の上昇が認められた。これらの結果から、嚢胞による緩徐な骨吸収には間葉系組織が中心的な役割を担っていることが示唆された。今後さらなる詳細な分子メカニズムを解析し,これらを応用した新規治療法の開発,再生医療への応用を目指していきたい。
3: やや遅れている
今回新たに得られた研究成果に対して十分な追及と検討を行う必要があると考えられる。この研究成果を用いて2度の学会発表を行っており、論文投稿に際して必要な追加データの収集と検証を現在行っている。
本研究に用いた細胞種がすべて既存の細胞株であるため、次年度に動物実験にてマウス胎児より歯原性細胞を採取・培養し同実験に使用することで実験の精度の向上を考えており、再現された含歯性嚢胞を用いることで発育性嚢胞による骨吸収メカニズムを解明する。また、細胞は組織構築において,隣合う細胞を含めた細胞環境によってその細胞動態,細胞運命が決定されるが、本研究に用いたガスによる密封型の圧迫培養法により、人体における様々な圧に対する細胞の反応を観察し報告を行う。
次年度において用いる細胞は実験動物より直接採取した物を使用予定であり、この動物実験を行うにあたり、初年度に比して次年度に係るであろう研究費が大きく見積もられたため、一部使用額を次年度へと持ち越すこととした。
動物実験に用いる実験動物の購入、実験環境の整備にすべての次年度使用額を消費する見込みである。
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