研究課題/領域番号 |
26861802
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
石川 美佐緒 鶴見大学, 歯学部, 助教 (90582445)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 歯の移動 / 歯根膜線維芽細胞 / 骨芽細胞 / エピジェネティクス |
研究実績の概要 |
矯正歯科治療で歯を移動させると、移動方向の歯根膜を圧迫し、反対側の歯根膜を牽引する。牽引側歯根膜では、歯根膜線維が伸展し、骨芽細胞の増殖と歯槽骨表面で類骨の形成が著しく行われることが分かっている。この時、多能性を備えている歯根膜線維芽細胞が骨芽細胞へ分化誘導していると言われている。この分化の過程をヒストンH3の9番目のリジン(H3K9)のメチル化修飾に焦点を絞り、矯正力を受けた歯根膜線維芽細胞の経時的な変化において、どのような修飾変化が生じるのかについて研究を行った。 免疫組織化学染色の結果、歯の移動を行っていない歯根膜線維芽細胞(コントロール群)でH3K9me1の発現を認めたが、歯の移動開始とともに7日目をピークとして歯槽頂線維群や水平線維群の歯根膜線維芽細胞、また歯根膜側や骨膜側の歯槽骨表面の骨芽細胞にH3K9me1,2,3のメチル化修飾を受けていることがわかった。その後、14日目ではコントロール群と比較し大きな変化を認めなくなった。次に、H3K9メチル化修飾を受けると核内のクロマチン構造変化を起こし遺伝子発現を調節していることがわかっているため、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、コントロール群と7日目群のクロマチン構造の観察を行った。その結果、歯槽骨表面の骨芽細胞のクロマチンの凝縮像は両群ともに多く観察されるのに対し、歯根膜線維芽細胞のクロマチンの凝縮は7日目群でのみ認められ、免疫組織化学染色結果を裏付ける結果を得た。次に、6種類あるH3K9メチル化修飾酵素の遺伝子レベルでの発現を確認するために、PCRを行った。そのうちの2種類でプライマーが決定し、遺伝子レベルでの発現を確認した。 歯の移動を開始することで、牽引側の歯根膜線維芽細胞でH3K9メチル化修飾酵素の活性によりクロマチンの凝縮が起きていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度の形態学的所見の補足をするべく、透過型電子顕微鏡によるクロマチンの構造変化の観察を行ったため。また、本研究では実験動物にラットの試料を使用し、realtime RT-PCR法を用いて6種類あるH3K9メチル化修飾酵素の遺伝子レベルでの発現を確認する予定であったが、その酵素に最適なprimerの決定に困難を極めており、現在もこの作業に時間を費やしている状態であるため。
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今後の研究の推進方策 |
現在進めている遺伝子レベルでの修飾酵素の経時的な発現変化の確認について進めていき、これまでの組織学的所見との整合性について検討していく。ただし、当初より進めている実験には、実験動物にラットを用いて行ってきているが、修飾酵素のprimer決定が困難な状態にあり、今後も適切なデータの算出に影響するようであれば、動物種を変えることも念頭に置きながら実験を進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度予定していた遺伝子レベルでの発現の確認を行う際に、実験の条件出しに時間を有してしまったことで、予定していた回数の実験を行うことができず、それに伴い実験で用いる薬品等の購入も少なくなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
遺伝子レベルでの発現の確認作業を引き続き行っていくため、その実験に使用する薬品の購入にあてる。
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