研究課題/領域番号 |
26861805
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
南原 弘美 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (00632168)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | P. gingivalis / Wnt5a / RvE1 / 歯周病 |
研究実績の概要 |
【目的】歯周炎はグラム陰性細菌感染による慢性炎症性疾患であり、支持組織の喪失と歯槽骨吸収を引き起こす。近年、non-canonical Wntシグナルは炎症の組織破壊において重要な役割を果たすことが報告された。さらにω-3多価不飽和脂肪酸由来のレゾルビンE1(RvE1)は好中球浸潤・炎症性サイトカイン抑制により抗炎症作用を有することが知られている。そこで本研究では、歯周病原細菌P. gingivalisによるWnt5a遺伝子の発現調節メカニズムを詳細に検討し、さらにRvE1によるWnt5a遺伝子発現の変化を検討することにより、歯周炎疾患進行における新たな炎症メカニズムおよびRvE1による抗炎症メカニズムの解析を目指すことを目的とした。 【方法】WT FVBマウス・Tg FVBChemR23+/+(RvE1受容体過剰発現)マウスより腹腔内マクロファージを採取、ChemR23下流のPI3Kシグナル抑制後、RvE1存在下非存在下におけるP. gingivalis LPS/IFN-γ刺激によるNF-κB活性・Wnt5a発現をRT-PCR法、western blot法およびChIPアッセイにて解析した。 【結果】RvE1存在下およびTg FVBChemR23+/+マウス由来腹腔内マクロファージでは、P. gingivalis LPS/IFN-γ誘導のNF-κB活性およびWnt5a遺伝子発現は減少した。 【考察】本研究により、①PI3KはP. gingivalis LPS/IFN-γ誘導のNF-κB活性およびWnt5a遺伝子発現の負の調節因子である、②RvE1は歯周炎疾患進行を抑制する重要な因子となることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
THP-1細胞において、P. gingivalis LPS刺激によるTLR下流のシグナル伝達のクロストークによりWnt5aが発現されるという仮説を立て、平成26・27年度の実験計画を提案したが、研究実施場所の変更に伴い、研究計画を以下のように一部変更した。 1)P. gingivalis LPSによるWnt5a発現における細胞内シグナル伝達の解析 WT FVBマウスおよびTg FVBChemR23+/+マウス由来腹腔内マクロファージを採取。各種阻害剤を用いてシグナル伝達を抑制、RvE1存在下非存在下においてP. gingivalis LPS/IFN-γ刺激を行い、Wnt5a mRNA発現変化をReal time RT-PCR法にて測定、ウエスタンブロッティングにより細胞内NF-κBシグナルタンパクを解析。 2)Wnt5aのTリンパ球へ及ぼす影響の解析 WT FVBマウスおよびTg FVBChemR23+/+マウス由来脾臓Tリンパ球を採取。腹腔内マクロファージと共培養を行い、各種阻害剤を用いてシグナル伝達を抑制、RvE1存在下非存在下においてP. gingivalis LPS/IFN-γ刺激を行い、上清中の分泌蛋白質をELISA法にて測定。同様にWnt5aのレセプターをブロックする抗Fz5抗体、抗ROR2抗体存在下にて、Wnt5aシグナルを阻害、P. gingivalis LPS/IFN-γ刺激を行い、上清中の分泌蛋白質をELISA法にて測定。 以上の実験より、PI3KはP. gingivalis LPS/IFN-γ誘導のNF-κB活性およびWnt5a遺伝子発現の負の調節因子である、RvE1は歯周炎疾患進行を抑制する重要な因子となることが示された。
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今後の研究の推進方策 |
【マウスマクロファージ細胞株を用い、NF-κB転写活性を検討】 RAW264.7細胞を用い、NF-κBルシフェラーゼレポータープラスミドにて遺伝子導入を行い、RvE1存在下非存在下におけるP. gingivalis LPS/IFN-γ刺激によるNF-κBの遺伝子への転写活性を解析する。 【腹腔内マクロファージ/脾臓Tリンパ球の共培養により各細胞間の相互作用を検討】 WT FVBマウスおよびTg FVBChemR23+/+マウス由来脾臓Tリンパ球を採取。腹腔内マクロファージと共培養を行い、各種阻害剤を用いてシグナル伝達を抑制、RvE1存在下非存在下においてP. gingivalis LPS/IFN-γ刺激を行い、上清中の分泌蛋白質をELISA法にて測定、同様にWnt5aのレセプターをブロックする抗Fz5抗体、抗ROR2抗体、Wnt5a siRNA存在下にて、Wnt5aシグナルを阻害、P. gingivalis LPS/IFN-γ刺激を行い、上清中の分泌蛋白質をELISA法にて測定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26・27年度にヒト単球系細胞THP-1を用い、LPS刺激によるWnt5a発現における細胞内シグナル伝達のクロストークを解析し、学会において発表する予定であったが、申請者の研究留学に伴い研究施設場所が変更となり、研究計画を一部変更し、ChemR23 Tgマウスを用いてWnt5a発現の解析を行うこととしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
実験に伴う以下の解析と学会での発表を平成28年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てる。 1)マウスマクロファージ細胞株を用いた、NF-κBの遺伝子への転写活性の解析。(ルシフェラーゼレポーターアッセイ) 2)WT FVBマウスおよびTg FVBChemR23+/+マウス由来の腹腔内マクロファージおよび脾臓Tリンパ球を用いた、細胞内シグナル伝達の解析。(ELISA法、PCR法、Western Blot法)
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