研究実績の概要 |
平成27年度は、実際にK1糖鎖リポソームに内包するTGF-βに関して検討を重ねた結果、内包蛋白質が十分な効果を発揮するリポソームを作製するためには、最低1でもmg以上の蛋白量が必要であることが明らかとなった。 将来的な臨床応用を見据えて、コストパフォーマンスの向上が必須と判断し研究計画を変更した。 TGF-βは歯肉上皮において、細胞内の転写因子Smad2を介して増殖を制御(Tomikawa et al, J Dent Res, 2012.)しており、in vitroの実験でSmad2を過剰発現させた歯肉上皮細胞では増殖抑制がおこることが分かっている(Shimoe et al, J Periodontal Res, 2014.)。 したがって、様々なSmad2制御シグナル系の中から、Smad2をユビキチン化する細胞内分子Smurf2に着目し、Smurf2抑制リポソームの作製を行う計画を立てた。 そして免疫染色法によって、歯周組織におけるSmurf2の発現パターンは、歯周炎を有していない健常マウスの歯肉上皮特異的に発現が増強し(n=3)、歯周炎モデルマウスではその発現が低下するという非常に興味深い知見が得られた。 このことから、Smurf2抑制K1糖鎖結合リポソームを作製することによって、歯周組織再生時の有害事象である歯肉上皮のダウングロースの抑制が期待できると考えられるため、今後Smurf2をターゲットにして研究を進めていく方向である。 さらに、Smurf2の歯周組織における動態を示した報告は過去に無いことから、新規性の高い研究になると考えている。
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