研究実績の概要 |
炎症のメディエーターである多価不飽和脂肪酸の中で、n-6系脂肪酸に由来するエイコサノイドは炎症促進的に働き、n-3系脂肪酸から産生されるエイコサノイドは炎症抑制的に働くことが報告されているが、本研究ではこれらのエイコサノイドが骨組織に及ぼす影響をWntシグナル伝達経路との関連も含めて検討した。 まず種々のエイコサノイドが骨芽細胞の増殖・分化に及ぼす影響を検討するため、RvD1, PD1及びPGE2が骨芽細胞様細胞であるMC3T3-E1細胞に及ぼす影響を調べた。どのエイコサノイドも細胞増殖には影響を及ぼさなかったが、RvD1はALP活性を増加させた。つまりは骨芽細胞の分化に対して影響を及ぼすことが示唆された。骨芽細胞の石灰化に及ぼす影響についてはvon Kossa染色およびアリザリンレッド染色を行ったが、有意な差は認められなかった。ウエスタンブロット法にてオステオカルシンのタンパク発現を調べたが、RvD1のみわずかな発現の増加が認められた。 次にWntシグナル伝達経路との関連を検討するためRvD1, PD1及びPGE2がWntシグナル伝達経路の構成因子であるβ-カテニンに及ぼす影響をタンパクの発現にて検討したが有意な差は認められなかった。又RvD1, PD1及びPGE2がWntシグナル伝達経路のアゴニストであるWnt3a及びアンタゴニストであるDKK1 の発現に及ぼす影響を調べる為、定量的PCR法にてmRNAの検出を行うも著名な差異は認められなかった。 本研究の成果はエイコサノイドを用いた、骨欠損に対する薬剤の開発に手がかりをもたらすと考えている。エイコサノイドを標的とした骨再生薬の開発は、歯周病・関節リウマチ・骨粗鬆症等の治療につながりその社会的意義は大きいと考えられる。
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