研究実績の概要 |
日本人の主要死因である心血管疾患(CVD)は、骨折・転倒や認知症と並んで要介護状態に直結する三大原因の一つである。近年、疫学調査によりCVDと慢性腎臓病(CKD)の合併はそれぞれの病態を悪化させることが報告され、心臓と腎臓の機能的連鎖が認識された(心腎連関)。歯周病はCVDとCKDに共通する基盤病態として注目されている(Fisher, et al. Kidney Int. 2011)。三者が関連する経路は数多くの因子が複雑に関与しているが、心腎連関進展に対する歯周病の影響に関するメカニズムは疫学的に十分に証明されていない。 本研究は、腎・内分泌代謝機能の視点から血漿抗体価測定を用いた歯周病原細菌感染度の関連を評価することにより、歯周病が心腎連関進展へ与える影響を明らかにすること目的とした。 研究最終年度は血液透析患者における歯周病が健康関連Quality of Life(HRQoL)に与える影響を探ることとした。血液透析患者188名を対象として、歯周病重症度と包括的HRQOL尺度MOS Short-Form 36-Item Health Survey(SF-36)の関連を横断的に評価した。結果として、健康な者と比較して、重度歯周病患者は、SF-36スコアが有意に低く、歯周病によりQOLが障害されていることが示唆された(Iwasaki et al. Clinical and Experimental Dental Research. 3(1), 13-18, 2017)。さらに歯周病は肺炎関連死のリスクを上昇させることが明らかとなった。 研究期間全体を通じて、地域在住一般集団および血液透析患者集団を対象とした疫学調査結果から歯周病は腎機能、心機能に関連していること、さらには呼吸器疾患、栄養状態、認知機能状態に対しても影響を及ぼしていることを明らかにした。
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