研究実績の概要 |
初期成年期として,2015・2016年度の新潟大学新入生各約3,000人の歯科健診受診予定者からランダムに研究の対象を抽出し,そのなかで同意を得られた587人を診査の対象者とした.1名の歯科医師が歯面単位(DMFS)で齲蝕の診査を行った.診査対象者には,小児期におけるフッ化物洗口プログラム(FMR-P)経験,および歯科保健行動に関するアンケートに回答してもらった.幼少期にFMR-Pを経験した群(以下,FMR-P群)(n=165,齲蝕有病率49.7%,平均DMFS=3.07,SD:5.65)では,その対照群(n=275,齲蝕有病率64.4%,平均DMFS=4.51,SD:6.82)に比較して齲蝕有病状況が低く,その差は統計的に有意であった. 幼少期のFMR-Pの経験は,その多くが歯磨剤を使用している初期成年期においても齲蝕抑制効果が認められた.また,FMR-Pによる齲蝕予防効果は,咬合面よりも隣接面において大きかった.よって,現在もなおFMR-Pは公衆衛生的な応用として有効である. また,成年期の調査として,長野健康センターで2004年4月から2015年3月までに人間ドックを受診した全受診者のうち,ベースライン時と5年後のデータおよびパノラマX線写真撮影が揃っている者194名(男性153名,女性41名,平均年齢55.2±9.4歳)を対象として調査を行った.パノラマX線写真より歯槽骨吸収量を測定し,ベースライン時の歯槽骨吸収量が中等度以上の者と軽度吸収の者の2群と各全身疾患マーカーのうち,心血管系イベント検査項目の基準値との関連について解析を行った.歯槽骨吸収量は心血管イベントリスク関連の検査項目のうちメタボリックシンドローム関連の指標値と関連することが示された.また,歯槽骨吸収が中等度以上であると,メタボリックシンドローム関連の指標値の経年的悪化が顕著である可能性が示唆された.
|