本研究では発音時の軟口蓋をはじめとする構音器官の運動速度がサルコぺニアの指標になり得るか検討し、構音器官の運動速度の改善方法を探ることを目的とした。 まず、被験文を決定し健常成人を対象にデータ採取をおこない、解析することで発音時の軟口蓋の運動速度の基準値を求めた。被験文は/bampa/とした。軟口蓋挙上時および下制時の運動速度に有意差はなく、発音時の移動距離が増加すると軟口蓋の運動速度が大きくなることがわかった。 つぎに、決定した被験文を用いて引き続き健常成人のデータおよび新たに健常高齢者、構音障害症例のデータを採取し研究を進める予定であった。しかしながら、実験に必要な機器が故障し、修理困難、新規購入の予定なしのため追加データを採取することは困難となり健常高齢者および構音障害症例のデータを研究実施計画通りに採取することができなかった。構音障害症例として口蓋裂術後症例のデータは予定を下回ったものの採取することができたため健常成人および口蓋裂術後の構音障害症例を対象とし研究を進めた。 健常成人に比べ口蓋裂術後症例では、発音時において軟口蓋挙上時も下制時も運動速さが小さく、軟口蓋の移動距離も小さい傾向がみられた。 口蓋裂症例のなかでも境界型鼻咽腔閉鎖不全症例(BVP群)と絶対的鼻咽腔閉鎖不全症例(VPI群)とで比較するとBVP群に比べVPI群の方が運動速さは小さく、移動距離も小さい傾向がみられた。
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