喫煙が口腔内に与える影響を明らかにすることを目的に、歯科診療所への受診者のうち成人を対象に、口臭測定、唾液検査、質問票調査を実施し、喫煙者と非喫煙者を比較検討を行った。口臭は呼気を採取し、測定機器を用いて主要口臭成分3種の揮発性硫黄化合物の濃度を検出した。唾液検査は、唾液採取後に、安静時唾液分泌速度、唾液の初期pH値および酸負荷後pH値の検査、そして口腔内湿潤度の測定を行った。質問票調査は自記式にて、属性、喫煙状況、口腔に関すること、生活習慣、全身状態、健康・生活に対する自己評価とした。その結果、調査期間とした平成26年8月から11月において、関東圏内6歯科診療所で98名より測定値および回答が得られた。喫煙者は40名、非喫煙者が58名で、性別は男性52名、女性46名、年代は60歳代が28名で最も多かった。分析の結果、非喫煙者群のほうが喫煙者群と比べて、口臭と唾液の両指標で良好な状態であることが明らかとなった。本研究は、口腔環境を構成する口臭および唾液に着目し、これらの客観的評価を用いた喫煙者と非喫煙者との比較によって局所的かつ全身的な影響を検証したものでであり、口腔保健行動や生活習慣に関する主観的評価を含めて総合的に分析する研究意義は大きい。喫煙者と非喫煙者の口腔内における差異を明らかにしたことは、今後、効果的な禁煙支援を検討するうえでの科学的エビデンスになり得ることが期待できる。
|