前年度までに要介護者高齢者の口腔清掃時舌表面微生物数の減少率が最も高い清掃器具、洗口剤、保湿剤の組み合わせを検討し、舌ブラシ、クロルヘキシジン配合洗口剤およびジェルタイプの口腔保湿剤を使用した清掃が最も効果的であることが明らかになった。 本年度はこの結果を応用し、口腔清掃による舌表面微生物の抑制が持続する時間を検討し、効果的な清掃方法や回数を考察した。 その結果、舌ブラシと洗口剤、口腔保湿剤を使用した清掃において、清掃直後、清掃後1時間、3時間、5時間において清掃前との間に統計学的有意差を認めた。その一方で、口腔保湿剤のみを使用し清掃した群では、清掃直後においてのみ清掃前との間に統計学的有意差を認めた。また、清掃を行わなかった群および水を使用した清掃群では、清掃前から清掃後5時間まで統計学的有意差は認められなかった。以上より、水よりも洗口剤を使用した舌清掃および口腔保湿剤を使用した舌清掃の方が清掃直後に舌背の微生物数が減少し、さらに洗口剤を用いた舌清掃の方が舌背の微生物数の減少時間がより長く持続することが明らかとなった。これは、口腔保湿剤と比較して洗口剤の方がより粘性が低いため、舌乳頭間への浸透性が高かったためと考えられる。 洗口剤と口腔保湿剤を用いた舌清掃によって舌背の微生物数が減少した状態が5時間持続した本研究成果より、要介護高齢者の口腔清掃については覚醒時は5時間程度間隔を開けても口腔微生物数の増加が抑えられることが示唆された。介護現場における適切なマンパワーの配置を考慮する際に本研究成果が一助となるものと考えられた。
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