研究実績の概要 |
在宅要介護高齢者への効率的な口腔保健管理提供を検討している。昨年まで歯科専門職が介入している特別養護老人ホームのデータから検討を行った。しかし、口腔保健管理の提供側である歯科医療機関側の状況については、検討を加えていなかった。そこで、平成29年度は、提供側からデータを収集し、検討を加えた。調査対象は、厚生労働省地方厚生局ホームページに掲示されている保険医療機関名簿から系統的抽出法で抽出した全国の歯科診療所2,000施設である。調査方法は、「在宅療養者についての訪問歯科に関するアンケート」を郵便留め置き法にて実施し、訪問歯科診療に関しての歯科医療機関側からの認識および実施状況を把握した。分析可能なデータは337件回収できた。 うち訪問歯科診療の実施経験があったのは250件であった。訪問歯科診療時での歯科衛生士の業務では、「義歯の清掃」が34.0%ともっと多かった。歯科衛生士が行う口腔保健管理業務は「口腔衛生状態の改善」を目的としたものが多く、「口腔機能の向上」を目的とした機能管理業務を行わせている歯科診療所は20%以下と少なかった。訪問歯科診療でも「義歯の不適合や破損の治療」は86.4%が行っていたが, 歯科疾患の予防管理や機能管理への関与は低いことが示唆された。また、訪問歯科診療の実績経験の有無に関わらず、訪問の連携先として「訪問看護ステーション」や「地域包括支援センター」を約70%の歯科医療機関で認識していたが,連携を経験した歯科医療機関は20%に満たなかった。「訪問看護ステーション」または「地域包括支援センター」と連携をした歯科医療機関の約90%が、連携は円滑であった,さらに連携をした後に口腔内状況の悪化はなかったと回答していることから,歯科医療機関と「訪問看護ステーション」、「地域包括支援センター」との連携は,在宅療養高齢者に有益な結果をもたらすと考えられた。
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