研究課題/領域番号 |
26861847
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
宮之原 真由 鶴見大学, 歯学部, 臨床助手 (70460186)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 人類進化モデル / チンパンジー / ミュータンスレンサ球菌 / ピロシーケンシング法 / 口腔衛生 |
研究実績の概要 |
う蝕は人類が農耕を始め、糖および炭水化物の摂取により人類が新たに起こした疾患とも考えられ、疾患の起源を推定することは重要と思われる。我々は、チンパンジー口腔より新菌種を見つけ、Streptococcus troglodytaeと命名した(2013, IJSEM)。この菌は系統学的にミュータンスレンサ球菌群の中で、ヒトう蝕病原菌のS. mutansに最も近縁であり、コンゴで捕獲された野生のチンパンジー口腔にも存在することが報告されている。 平成26年度には、病原遺伝子グルコシルトランスフェラーゼ(GTF)を含む、この細菌の全遺伝子解析が概ね終了し、詳細に検討中である。チンパンジー口腔細菌叢解析の結果、11個体中3個体からミュータンスレンサ球菌群に属するStreptococcus dentirousetiiが分離されたことを論文に発表した(Microbiol. Immunol. 2013)。この菌はオオコウモリから分離された報告があるが、どのようにチンパンジー口腔に存在したのか不明である。更に、新菌種としてミュータンスレンサ球菌類似の多糖体を作るが、ミチスグループに属する細菌も見つかり、論文に投稿中である。 5個体のチンパンジーおよび対照となるヒト1名の口腔細菌叢解析を、次世代シーケンサーを用いるピロシーケンシング法により解析した。その結果、全てのチンパンジーからう蝕、歯周疾患と関連する細菌が検出されたにも拘わらず、口腔内診査で比較的健全であることが判明し、今後の検討課題と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の課題である、次世代シーケンサーを用いるピロシーケンス法で口腔内細菌叢を解析する方法を確立することである。5個体のチンパンジーおよび対照となるヒト1名の口腔細菌叢解析を、次世代シーケンサーを用いるピロシーケンシング法により解析した。
その結果、ブラッシング歯垢から良好な状態でDNAが回収され、バイオインフォマテックスによる解析では、対照となるヒト口腔細菌叢の菌種別の割合も従来培養法で得られる数値と概ね一致していた。更にピロシーケンス法では難培養性の菌種、および未報告の細菌種も多数検出され、細菌叢解析手段として十分使えることが分かった。培養法で新菌種を発見し、論文投稿中である。この菌の性状はミュータンスレンサ球菌類似の多糖体を作るが、ミチスグループに属するものと思われる。
ミチスグループに属する細菌は、口腔常在菌から病原性のある肺炎レンサ球菌が含まれ、今後、チンパンジーの菌の遺伝子を調べることにより、これらミチスグループの細菌の病原性獲得の解析に役立つものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
チンパンジー口腔細菌叢解析の結果、11個体中3個体からミュータンスレンサ球菌群に属するStreptococcus dentirousetiiが分離されたことを論文に発表した(Microbiol. Immunol. 2013)。
この菌はオオコウモリから分離された報告があるが、チンパンジー口腔に存在することとの関連は不明である。
平成27年度には、この菌の全遺伝子解析を行い、バイオインフマッテクスを用いて、オオコウモリとチンパンジーから分離された菌、おとび類縁関係の細菌の遺伝子を詳細に比較、検討することにより、この菌の由来が推測できるものと考えられる。更に今後、口腔細菌叢と口腔状態、全身の健康状態との関連を解析し、口腔細菌叢の及ぼす影響を検討し、学会で発表したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
サンプルを次世代シーケンサーによる解析のために使用した、新たなサンプル採取の時期を待っているため、次年度に持ち越しとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
次世代シーケンサーによるStreptococcus dentirousetiiの全遺伝子解析を行う(約60万円)。 バイオインフォマッテクス解析のためのパソコン、およびゲノム解析ソフト(Insilico Morecular Cloning GE) を購入したい〈約35万円〉。
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