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2015 年度 実施状況報告書

人類進化モデルを用いた口腔細菌叢の網羅的解析

研究課題

研究課題/領域番号 26861847
研究機関鶴見大学

研究代表者

宮之原 真由  鶴見大学, 歯学部, 学部助手 (70460186)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード人類進化モデル / チンパンジー / ミュータンスレンサ球菌 / ピロシーケンシング法 / 口腔衛生
研究実績の概要

チンパンジー口腔細菌叢解析の中で、う蝕の原因菌であるミュータンスレンサ球菌群に属す菌種を調べた結果、チンパンジー11個体中4個体からStreptococcus troglodytae,3個体からStreptococcus dentirousettiが分離され、論文に発表した(Microbiol. Immunol. 2013, 57, 359)。
ミュータンスレンサ球菌群のグルコシルトランスフェラーゼ遺伝子の系統進化は宿主哺乳類の生物学的進化と同様に進行することが報告されている(PLoS One, 2013, e56305)。S. dentirousettiは、オオコウモリ口腔から分離されたが(IJSEM,2008,160)、進化程度の異なるチンパンジー口腔になぜ存在するのか疑問が残った。近年、アフリカでエボラ出血熱が流行し、チンパンジーもエボラ出血熱に感染する。オオコウモリが最もこのウイルスキャリアーと考えられ(Nature, 2005, 438, 575)、チンパンジーがオオコウモリと接触、あるいは捕食する可能性が考えられた。捕食関係で動物間の口腔細菌の感染が起こるのか、又この細菌はコウモリ由来のS. dentirousettiと同じなのか疑問に思った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成27年度の課題として、チンパンジーから分離されたS. dentirousetti TKU32の全遺伝子解析をピローシーケンス法で行い、詳細に検討した。
その結果、TKU32は2,248,552 bpの連続した1つのscaffoldが得られ、GC含量は43.80%であった。DDBJのMiGAPアノテーションソフトによるドラフト解析では、2078個のCDS、6個のrRNA loci、68個のtRNAが存在した。チンパンジーから分離されたS. dentirousettiは細菌分類の定義である16S rRNA遺伝子相同性ではオオコウモリのそれと100%一致し、細菌学的分類ではS. dentirousettiと考えられるが、グルコシルトランスフェラーゼ遺伝子など他の遺伝子の解析ではオオコウモリのものとは異なり、分類学的に異なる菌種と考えられた。
このことから感染経路は捕食によるものではないことが推測されたが、分類的位置関係は今後の課題となった。
平成27年度には、更にミチスグループに属する新菌種を発見し、Streptococcus panodentisと命名した(Microbiol. Immunol. 2015)。ミチスグループに属する細菌は、病原性がなく、むしろ病原菌の侵入を防ぐ働きの口腔常在菌が多い中、唯一病原性が強い肺炎レンサ球菌が含まれ、今後これらの菌の遺伝子を調べることにより、肺炎レンサ球菌の病原性遺伝獲得のメカニズム解析に役立つものと考えられる。

今後の研究の推進方策

本年度は本研究課題の最終年度である。口腔細菌はその宿主の生物学的な進化と共に変化していることが明らかとなり、これらの関係を総合的にまとめ、考察し、論文に発表したい。S. dentirousetiiの分類的位置関係、ミチスグループ細菌群の病原性遺伝子獲得のメカニズムなどミチスグループ細菌群の病原性遺伝子獲得のメカニズムなどが新たな課題と考えられた。

次年度使用額が生じた理由

一度で十分なサンプルの数の解析が出来なかったため。

次年度使用額の使用計画

チンパンジー(n=5)の口腔細菌叢をピロシーケンス法により外部業者に委託し、口腔細菌叢の解析を行う予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (1件) (うち謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Streptococcus panodentis sp. nov. from the oral cavities of chimpanzees.2015

    • 著者名/発表者名
      Okamoto M, Imai S, Miyanohara M, Saito W, Momoi Y, Nomura Y, Ikawa T, Ogawa T, Miyabe-Nishiwaki T, Kaneko A, Watanabe A, Watanabe S, Hayashi M, Tomonaga M, Hanada N.
    • 雑誌名

      Microbiology and Immunology

      巻: 9 ページ: 526-32

    • DOI

      10.1111/1348-0421.12290.

    • 謝辞記載あり
  • [学会発表] チンパンジー口腔細菌叢の解析2016

    • 著者名/発表者名
      岡本公彰、宮之原真由、今井奨、野村義明、斉藤渉、桃井保子、花田信弘
    • 学会等名
      第65回 日本口腔衛生学会
    • 発表場所
      東京医科歯科大学M&Dタワー(東京都文京区)
    • 年月日
      2016-05-27 – 2016-05-29
  • [学会発表] 3DS除菌外来における疲労測定システム(自律神経測定センサー)の導入2016

    • 著者名/発表者名
      宮之原真由、村田貴俊、山田秀則、岡田彩子、石川芽生、野村義明、花田信弘
    • 学会等名
      第65回 日本口腔衛生学会
    • 発表場所
      東京医科歯科大学M&Dタワー(東京都文京区)
    • 年月日
      2016-05-27 – 2016-05-29
  • [学会発表] Biofilm formation and demineralization by mutans streptococci from humans and chimpanzees2015

    • 著者名/発表者名
      Susumu Imai,Ayako Okada,Masaaki Okamoto,Mayu Miyanohara,Kazumasa Oota,Yoshiaki Nomura,Yasuko Momoi and Nobuhiro Hanada
    • 学会等名
      第63回 JADR
    • 発表場所
      福岡国際会議場(福岡県福岡市)
    • 年月日
      2015-10-30 – 2015-10-31
    • 国際学会

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公開日: 2017-01-06  

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