研究実績の概要 |
チンパンジーの口腔からミュータンスレンサ球菌の新菌種を見つけ、S. troglodytaeと命名しInt J Syst Evol Microbiol. (2013)に発表した。 平成28年度はこの菌の全遺伝子を詳細に調べ、Microbiol Immunol,; 60 (12): 811-816. 2016に報告した。方法は、チンパンジー口腔から分離されたS. troglodytae TKU31株を対象とし、Roche GS FLXにより得られた配列からアセンブル作業とGap closingにより全ゲノム配列を決定した。その結果、S. troglodytaeTKU31の遺伝子は、全長2,097,874 bp, DNA GC含量は37.18%であった。アノテーションの結果、CDSは2,082で、S. mutansの遺伝子と非常に類似していた。病原因子遺伝子として、グルコシルトランスフェラーゼ遺伝子(gtfB, gtfCおよびgtfD)、グルカン結合蛋白遺伝子(gbpA, gbpB, gbpCおよびgbpD)を持っていた。しかし、コラーゲン結合蛋白cnmおよびcbm遺伝子は持っていなかった。Rhamnose-glucose polysaccharide (rgp)遺伝子はStreptococcus属のセロタイプを決定する有用な遺伝子と考えられる。TKU31株のrgp遺伝子はS. mutans serotype c, e, f より、S. mutans LJ23株(serotype k)と最も類似していた。 以上のことから、チンパンジーにはヒト口腔に存在するS. mutansと類似の細菌が存在し、病原遺伝子も類似することが明らかとなった。S. troglotytaeTKU31の全遺伝子はDDBJ/ENA/GenBank accession no AP014612に登録した。
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